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経済ニュースゼミバックナンバー(その6)



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経済学基礎講座

 

ナンバー 主要項目
経済ニュースゼミ(第98号) 2005年8月29日 講座(郵政民営化、独占)
量的緩和せめぎ合い
経済ニュースゼミ(第99号) 2005年8月31日 講座(死荷重)
カトリーナと原油価格の高騰、元切り上げ、繰延税金資産
経済ニュースゼミ(第100号) 2005年9月2日 講座(消費者余剰)
米ハリケーン、物価の動向、経済政策論争
経済ニュースゼミ(第101号) 2005年9月5日 講座(消費者余剰)
最低賃金法、ガソリン買いだめ要請、原油原単位、米ハリケーン被害
経済ニュースゼミ(第102号) 2005年9月7日 講座(市場の失敗)、 ダイエーの人員削減
経済ニュースゼミ(第103号) 2005年9月9日 講座(キャベツの経済学)
民間銀行の貸出残高増加、ハリケーン被害とガソリン価格
経済ニュースゼミ(第104号) 2005年9月12日 講座(農家の経済学)
石油高騰
経済ニュースゼミ(第105号) 2005年9月14日 講座(新古典派分配理論)
石油価格の動向とその波紋
経済ニュースゼミ(第106号) 2005年9月16日 講座(新古典派分配理論)
ソニーの金融事業売却、金融債の法人向け発行停止
経済ニュースゼミ(第107号) 2005年9月21日 基準地価が反転、公認会計士にインセンティブを
経済ニュースゼミ(第108号) 2005年9月26日 講座(新古典派分配理論)
G7会議と人民元、FRB議長、量的緩和政策
経済ニュースゼミ(第109号) 2005年9月28日 講座(限界生産逓減)
ハリケーンの影響と金利
経済ニュースゼミ(第110号) 2005年9月30日 講座(対外純投資)
米、対中繊維協議
経済ニュースゼミ(第111号) 2005年10月3日 講座(対外純投資)
郵便局の投資信託販売
経済ニュースゼミ(第112号) 2005年10月5日 講座(世界利子率)
量的緩和策を巡る論争
経済ニュースゼミ(第113号) 2005年10月7日 講座(世界利子率)
トヨタ、富士重の筆頭株主に
経済ニュースゼミ(第114号) 2005年10月14日 講座(実質為替レート)
量的緩和策解除へ地ならし
経済ニュースゼミ(第115号) 2005年10月17日 講座(実質為替レート)
米、インフレ懸念
経済ニュースゼミ(第116号) 2005年10月19日 講座(貿易政策)
GM、労組と合意へ
経済ニュースゼミ(第117号) 2005年10月21日 講座(大国開放経済)
中国経済成長率9.4%
経済ニュースゼミ(第118号) 2005年10月24日 講座(大国開放経済)
中国の成長力と米国
経済ニュースゼミ(第119号) 2005年10月26日) 講座(ケインズ経済学)
次期FRB議長
経済ニュースゼミ(第120号) 2005年10月28日 インフレ目標値
経済ニュースゼミ(第121号) 2005年10月31日 講座(ケインズ経済学) 米国の経済成長率
経済ニュースゼミ(第122号) 2005年11月2日 日銀の展望レポート
経済ニュースゼミ(第123号) 2005年11月4日 講座(ケインズ経済学) 米国の金利引き上げ







経済ニュースゼミ(第98号) 2005年8月29日
 こんにちは、Seijiです。
 3週間のご無沙汰です。8月も残すところ僅かになりました。私は、田舎に帰りました
が、皆さんはどんな夏休みをお過ごしでしたでしょうか。

 ところで、今回から「経済ニュースゼミ」のスタイルを若干変更したいと思います。

 最初に、「経済ニュースこれだけは」ですが、「経済ニュース解説」とし、取り上げ
るニュースを絞り、解説を試みます。
 
 シリーズものは、これまでの「開発援助」を一応終了し、「経済学基礎講座」を開始
したいと思います。マンキュー教授のテキストを利用し、マクロ経済、ミクロ経済の
基礎理論を紹介したいと思います。


 では、経済ニュースゼミを始めましょう。


<本日のメニュー>
 1.経済ニュース解説(量的緩和せめぎ合い)
 2.経済学基礎講座(郵政民営化)
 3.編集後記
===================
経済ニュース解説(量的緩和せめぎ合い)
===================

 3週間お休みでしたので、新聞の切抜きがいっぱいになりましたが、今日は、国内の
経済ニュースを見てみましょう。

■量的緩和せめぎ合い
「量的緩和せめぎ合い」というタイトルで、「日銀による金融の量的緩和を巡る関係者
のせめぎ合い活発になった」ことが紹介されています。(日経、8月25日)

 この背景には、今年4−6月期のGDPが3期連続プラスの1.1%の成長を示し、景気の
「踊り場」脱却が裏付けられたことがあります。

 日銀内には、そもそも異例な措置である「量的緩和政策」に消極的な意見があるよう
ですが、景気が回復基調になり、そのような声が強まっているということです。
 しかし、その一方で、財務省は、「地方交付税の支払日を変更するなど量的緩和を
維持しやすい環境を整えることで、日銀内にくすぶる早期解除論のけん制に動き始め
た」とあります。

 さて、この日銀と財務省の意見の対立をどのように評価すべきでしょうか。

 日銀(消極派)が言うように、「当座預金の残高を目標値の近づけようと国債など
の買いオペを行なっても、札割れが起こっているということは、民間金融機関の資金
需要が緩和しているということだ」という考えは、理屈が合います。その一方で、財
務省が国債の金利負担を抑えたいというのも、当たり前の発想だと思います。

 ただ、財政当局の動きには注意が必要です。それは、金融政策は、日銀の専権事項
であって、中央銀行の独立性は尊重されなければいけないからです。従って、いくら
低金利が望ましいと財政当局が考えたところで、その言動には節度が求められます。

 また、日銀に独立性が認められないと仮定しても、低金利を求める財政当局の考え
方には、内容的に留保条件が付きます。

 それは、いくら金利を低く抑えたいと考えても、インフレが起こっては元も子もな
いということです。
 しかし、古今東西を問わず、借金をした政府当局は、インフレに期待するところが
あります。どんなに借金が嵩んでも、インフレになれば簡単に完済できるからです。

 我が国の財政当局は、インフレを期待するほど無責任だとは思いませんし、また、
現状ではインフレが起こるような環境にはないので、財政当局の発言が問題視される
ことはないように思われるかもしれません。
 しかし、今後物価が上昇しインフレにならないとは誰も予想できません。それは歴
史が教えるところです。しかし、仮に物価が上がっても、財政当局は責任を取らない
でしょう。財政当局は、「物価を安定させるのは、日銀の仕事の筈だ」というだけで
す。

 以上のようなことに鑑みれば、地方交付税の支払日を変更するなどしてまで、日銀
当座預金の残高目標値を死守しようとするのは、異常とも思えます。



 以上
=============
経済学基礎講座(郵政民営化)
=============

【中洲先生】
 選挙も近まっているので、選挙の関連のことを取り上げようかな。
 では、現政権に敬意を表して「郵政民営化」を考えてみようか。
【佳子】
 「官から民へ」?
【研一】
 民間でできることは民間でやった方が効率的ということですか?


【中洲先生】
 そういう見方も当然必要だけど、もっと違った視点もあるんじゃないかな。
 でも、「官から民へ」ということで考えてみようか。
 何で官より民がいいのかな?
【研一】
 官だったら、市場経済の原理が働かないから。
【中洲先生】
 市場原理が働かないとは?
【佳子】
 先生、バカにしているね。
 市場では、需要と供給が均衡するところで価格が決定するでしょ。
 だから、いくら費用が掛かっても、必ずしも事業者の都合だけで、その費用を代金
に反映することができないのよ。だって、代金が高いと、郵便を出すのも考えるでし
ょ。安ければしょっちゅう利用するけど。
【研一】
 それに、消費者にもっと利用してもらおうと事業者の方が努力するから、サービス
もよくなる。


【中洲先生】
 だけど、民営化された後も、1社だけで事業を行なうとしたら?
【研一】
 1社でも、民間は民間。
【佳子】
 民間は民間ということは、市場原理が‥
 でもちょっと待ってね。
【研一】
 1社だけだと、競争原理が働かないですね。独占になっちゃう。
【佳子】
 独占だと、生産者の方が自由に価格を選べるのよね。
【中洲先生】
 そうだよね。独占になったら、競争原理が働かない。そうなると、消費者は不利に
なる。


【佳子】
 先生は、民営化に反対なの?
【中洲先生】
 反対というわけではない。
 しかし、「官から民へ」というのは、若干舌たらずだということ。
 競争状態に持って行き、事業が効率化されることがより本質的に重要だというこ
と。
【佳子】
 だったら、民営化しなくても、誰でも郵便事業などができるようにして、競争させ
ればいいと言う訳?


【研一】
 でも、少し変ですね。
 郵便事業は、これまで独占事業だったけど、貯金や簡保の事業は、既に、民間の銀
行や保険会社と競争状態にあるんじゃないですか?
【中洲先生】
 いいところに気が付いたね。
【佳子】
 でも、もともと郵政事業の民営化は、普通の人は、郵便貯金や簡易保険の民営化の
方が重要で、郵便事業の民営化が重要だというのは、小泉さんくらいしかいなかった
のじゃないのかな‥
【研一】
 そう言えばそうだ。
 じゃあ、郵便貯金や簡保については、民営化の必要性というのは、薄いということ
ですか?
【中洲先生】
 確かに、民間の銀行や保険会社があるにはあるが、競争が実現していないというこ
とだ。
 競争が実現するためには、そのための条件が等しくなければいけないけど、現実は
そうなっていない。例えば、民間の銀行は、預金保険制度はあるものの、郵便局のよ
うに国家が保証するものではない。
【佳子】
 だけど、そのことによって、消費者側が不利になっているわけではないですよね。
【研一】
 不利というと?
【佳子】
 独占状態にある場合と比べてということ。
【中洲先生】
 それは、佳子ちゃんのいうとおりだね。しかし、官営であるということによって、
コスト意識が薄くなる恐れがあり、結果としてそれは納税者の負担になる。
 だから、最近の民営化の議論は、「官の非効率」に焦点を当てたものということ
だ。


【研一】
 郵便貯金や簡保と違って、郵便事業は、独占状態にあるんですよね。
【中洲先生】
 だから、郵便事業については、「官の非効率」という視点に加えて、「独占の弊
害」という視点から検討されるべきということになる。
【研一】
 そういうことですか。
 郵便事業については、単に民間会社に移行したからそれでいいということではな
く、独占状態を解除し、競争させることが必要なのですね。
【中洲先生】
 経済学の教科書を紐解くと、「官の非効率」ということよりも「独占」について多
くのページが割かれているよね。
【佳子】
 だけど、今回の民営化の議論では、「独占」という視点では、あまり議論されてい
ないようね気が‥
 それどころか、僻地でも現在のように郵便が届けられるシステムを今までどおり維
持すべきだという点では、皆意見が一致していますよ。
【中洲先生】
 その点について、国民にコンセンサスが出来ているのであれば、それは民営化しよ
うとしまいと、そうしたシステムが維持できるように、補助金を与えるなどの工夫を
すべきなんだろうね。
 ただ、その一方で、都市部における郵便事業において、独占によってコスト以上の
価格が付けられているとしたら、その分消費者にとって不利になっているし、経済学
で言う「死荷重」が発生している恐れがあるので、社会全体として好ましくないと言
えるということだ。


【研一】
 死荷重って何ですか?
【中洲先生】
 本来の効率的な水準よりも低い水準でしか生産されていないということ。
【研一】
 何で効率的な水準より低い生産量になるのですか?
【中洲先生】
 独占でない競争市場では、需要と供給が均衡する地点が効率的な水準になるけど、
独占だと、限界収入と限界費用が等しい水準で生産量が決定される。
【佳子】
 生産量を一単位追加した場合の限界的な収入と費用が等しいということは、その時
点で最大の利益が実現するのですよね。
【中洲先生】
 ところが、独占状態では、限界収入と限界費用が一致する地点での生産量に対し、
需要者が支払っていいと考える価格は限界費用を上回っている。
 従って、需要者が支払っていいと考える価格の方が、供給者の限界費用を上回って
いるにも関わらず、生産が実現されない部分が出現することになる。そこのところを
「死荷重」と呼ぶ訳だよ。

以上


======
編集後記
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 皆さん、夏休みはどんなでしたか。
 私は、田舎に帰り、海に行きました。といっても海水浴ではないのですが、有明海
の干潟を楽しみました。
 最近、アサリもあまり取れなくなっているみたいですが、海岸を散策しているとウ
マヅラの稚魚のようなのが泳いでおり、手ですくうことができました。それから、殆
ど取れなくなったというタイラギという貝を5つほど見つけたのが、想定外の喜びでし
た。収穫できる程の大きさではなかったのですが、海底に潜んでいると思っていたタ
イラギが干潮の海岸で見つけることができたのは驚きでした。

 テレビは、選挙関連一色の様相ですが、皆さん、どんな感想をお持ちですか。
 経済ニュースゼミも、選挙で話題になりそうなテーマを取り上げて行きたいと思い
ます。

 では、次回まで






経済ニュースゼミ(第99号) 2005年8月31日
皆さん、こんにちは、Seijiです。
8月も今日限りです。明日はもう9月。皆さんの今年の夏はどんなだったでしょう。
猛暑は大変ですが、さりとて夏が過ぎ去るのも少し寂しいものですね。
 
では、経済ニュースゼミを始めましょう。


<本日のメニュー>
 1.経済ニュース解説
 2.経済学基礎講座(死荷重)
 3.編集後記
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経済ニュース解説
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■カトリーナと原油価格の高騰
 アメリカは、ハリケーンの被害で大変なようです。連日ハリケーン「カトリーナ」
の被害が報じられています。大統領も夏休みを2日ほど縮めてワシントンに戻るそうで
す。
 「ハリケーン 米経済揺さぶる NY原油 最高値 70.85ドル」とあります。(日
経新聞、8月31日)

 今回のハリケーンの名前は、「カトリーナ」だとか‥。「カトリーヌ」だと憶えや
すいんですけどね。昨年被害をもたらしたハリケーンは、「アイバン」でしたが、憶
えていました?

ところで、ハリケーンの定義をしっていますか?要するに風速がどのくらいからハリ
ケーンと呼ばれるか?
答えは、中心付近の最大風速が32.7メートル以上の場合だということです。中途半端
な数字のようですが、風速64ノットということだそうです。台風の場合は、17.2メー
トル以上(34ノット)だそうです。どうしてそんなに差があるのでしょう。

 それはそうと、このカトリーナが米石油産業の心臓部を直撃し、石油の生産に大き
な影響が出ているとあります。また、損害保険会社が支払う保険金の総額は260億ドル
にも達しそうだということです。

 「NY原油 初の70ドル台」(日経新聞、8月30日)、「NY原油最高値70.85ド
ル」(日経新聞、8月31日)とあります。
 このように原油相場は1バレル70ドル台をつけた訳ですが、過去と比べるとどのくら
いの水準にあるのでしょう。この点、日経(8月30日)は、貴重なデータを提供してく
れています。
 というのは、過去30年前の原油の価格をそのまま引っ張ってきても、インフレや為
替の変化で、実質的な比較が困難だからです。東京三菱銀行は、「実質原油価格」を
試算しているそうで、それがグラフになって紹介されています。それによると、名目
価格は、現在がピークですが、実質価格でみると、1980年には、92ドルの最高値をつ
けているそうです。また、第一次オイルショック後の1974年1月時点でさえ、41ドルに
なっています。
 いずれにしても、現在原油が高騰を続けていますが、過去の実質ピーク値(92ド
ル)には至っておらず、原油高騰の深刻度合いは過去ほどではないということです。

 ところで、米国政府は、こうした事態に対処するため、戦略石油備蓄(SPR)を
放出することを検討するとあります。戦略備蓄は、約7億バーレルで、米国国内消費量
の約35日分だそうです。


■中国の対米輸出と元の切り上げ

 「中国製繊維製品 2ケタ輸入増容認を」(日経、8月31日)とあったので、中国政
府が米国に泣きついたのかと思ったら、米国小売業界が、米国政府に要請したとのこ
とです。米国は今年に入り多くの繊維製品で緊急輸入制限を発動し、今後も新たな発
動が予想され、仕入計画に支障が出ていることが原因であるとあります。

 現在は、米国の政界も夏休みなので目だった動きはないようですが、夏休み後は、
中国に対する姿勢が強まることが十分予想されています。

 「人民元切り上げから1ヶ月 中国 緩やかな改革の姿勢」(朝日、8月21日)とあ
ります。確かに、2%の元の切り上げは実施されましたが、その後は強力な為替介入が
続いており、実質的な固定相場制が続いていると考えた方がよさそうな状況です。

 そもそも、中国では当初の切り上げ幅を3%にするか5%にするか議論があったそう
で、そういう意味からは、もう一段の切り上げを行なう余裕があるということです。9
月に入ると中国の国家主席が訪米しますが、そのときのために切り上げの「糊代」を
確保しているのでしょうか。

 人民元の切り上げ問題については、確かに中国当局が介入を行なうとダーティーな
イメージが付きまとい、フェアでないと考え勝ちですが、仮に完全にフロート化され
ても、米国と中国との間で絶対的な賃金格差が存在する以上、中国からの輸出が沈静
化するとは思えません。輸出の勢いが止まるのは、中国の内陸部も相当に豊かになり
賃金が先進国並みになってからの話です。

■繰延税金資産の上限
「繰延税金資産に上限 中核自己資本の20% 金融庁方針」とあります。(日経、8月
26日)金融庁は、繰延税金資産に上限を設定する方針のようです。2006年3月期から規
制を導入し、2008年3月期には自己資本の20%に制限したいとの考えのようです。
 確かに、竹中氏が金融庁の担当大臣に就任した当時、繰延税金資産の算入規制が議
論されました。それが漸く実現されるというのでしょうか。

 しかし、この問題ちょっと納得しづらい点もあります。
 繰延税金資産をどの程度計上するのが合理的かというのは、第一義的には公認会計
士の実務指針で扱われるべき問題ではないでしょうか。金融機関の監督当局が、ここ
までなら認めるといった類の問題ではないような気がしないでもないのですが‥。

 その点をさておいても、規制の内容そのものに違和感があります。
 金融庁自身も認めるとおり、金融業界は、不良債権処理も峠を越え、異常時から平
時に戻ってきていると言われています。それは、金融機関の収益力の回復を意味して
います。収益力が回復しているということは、少々繰延税金資産が多めに計上されて
いようとも妥当性があるということです。逆に過去の異常時では、何期も連続して赤
字が続き、とても繰延税金資産を計上すべきではないときでも、計上されていた節
があります。

 より厳格に対処するのだから、金融庁としては文句を言われる筋はないとの返答が
返ってきそうな気がしますが、でも、違和感がありますね。

 いずれにしても、金融庁がここまでなら計上を認めるよというのではなく、公認会
計士自らがそうした議論を行い、実務指針の改定に持っていくべきではないかと考え
ます。


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経済学基礎講座
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【佳子】
 先生、前回は死荷重というのを教えてくれましたね。だけど、「死加重」ではなく
「死荷重」ですよね。
【中洲先生】
 そうだよ。「死加重」ではなく「死荷重」だよ。誰も「死加重」なんて言ってないよ。
 メルマガを書いているseijiのせいだ。
【研一】
 その死荷重ですが、教科書をみると、「独占」以外のところでも出ていますね。
【佳子】
 へー、そうなんだ。


【中洲先生】
 研一君、勉強したのなら紹介して。
【研一】
 死荷重は、税金がかかると発生するんですよね。
【佳子】
 税金にもいろいろ種類はあるけど?
【研一】
 先ずは、消費税のような税金。
 ある財の需要と供給が、ある価格で均衡しているとする。その時、その財に一定の
税がかかるとどうなるか?佳子ちゃん、分かる?
【佳子】
 財というと味気ないから、車に置き換えるね。
 車を買う人と売る人がいて、それで、歳入が足りない政府が税金をかけるというの
でしょ。
 税金をかけられると、値段が上がるので、購入量は減るよね。
 ははー、分かった。税金がかからない状態に比べ、税金がかかるようになったら取
引量が減るのね。だからその分経済活動が阻害されると考えるということ?
【中洲先生】
 まあ、そんなものかな。


【研一】
 じゃあ、税が買い手にかかる場合と売り手にかかる場合では違いがある?
【佳子】
 買い手にかかると、今言ったように買う意欲がそがれるので売れ行きが落ちるわ
ね。売り手にかかる場合には、売れ行きは落ちないわ。
【中洲先生】
 経済学の教科書的に考えてみて。
【佳子】
 じゃあ、売り手は、税金がかかった分車の価格に上乗せするのかな?
【中洲先生】
 そうなったら、買い手が税金を払うのと同じことになるだろう。
【佳子】
 なんかややしこくなったな。


【研一】
 経済学の教科書では、税が買い手にかかろうと売り手にかかろうと同じことだと教
えているんですよね。
【中洲先生】
 そうだね。
【佳子】
 だけど、現実には、買い手が負担するのと売り手が負担するのでは、大違いのよう
な気もするけど。
【研一】
 街で買い物をすると、税込みの価格と税引の価格が書いてあるので、消費者が負担
しているという意識が国民にはありますよね。


【佳子】
 たとえそうでも、経済学の教科書は、同じことだと教えているんですか?
【中洲先生】
 形式的な税の負担者と実質的な負担者は違うということだよ。
【佳子】
 じゃあ、負担の割合は?
【中洲先生】
 研一君は、どう考える?
【研一】
 僕は教科書を読んじゃったんで、答えが分かるのですが‥
【佳子】
 なんかヒントはないの?
【研一】
 需要曲線の傾きを考えたら?
【佳子】
 傾き?
【中洲先生】
 需要曲線と供給曲線は分かるよね。
【佳子】
 あのXみたいに交わる曲線でしょ。
 需要曲線は、価格が下がるとともに需要が増えるから右下がりと。
 その傾きのこと?
【研一】
 そうそう。
【中洲先生】
 その需要曲線が水平に近い状態と、垂直に近い状態を考えてみて。
【佳子】
 垂直に近いということは、価格が下がってもあまり需要が増えないけど、逆に価格
が上がってもあまり需要は減らないのよね。上がろうと下がろうと購入量が一定のよ
うなもの。それは私の家のお米の消費量みたいなものね。あるいは水道の消費量か
な。
【中洲先生】
 じゃあ、水平の曲線は?
【佳子】
 海外旅行のようなものとか、ブランドもの?
【中洲先生】
 その海外旅行に税金がかかるとしたら?
【佳子】
 海外旅行については、消費者や価格に反応しやすいということだから、少しでも負
担がふえるなら、行かないということになるね。
【中洲先生】
 だとすると、売り手の旅行代理店の方がより大きな負担を負うことになる。
【佳子】
 じゃあ、水道料金やお米の値段が上がる場合には、消費者の需要はそれほど減らな
いから、消費者の実質負担が大きくなるということ?
【中洲先生】
 そのとおりだよ。
 要するにどうしても買いたければ、負担が大きくなるし、そうでなければ負担は小
さいということ。そしてどの程度買いたいと思っているかが需要曲線の傾きに表れ
る。その傾きの程度に応じて税が負担されるということだよ。
【佳子】
 そういうことなの。


次回に続く


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編集後記
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 経済学の話をする時は、数式は別としても、グラフなしでは難しいですね。
 でも、グラフなしで分かってもらえないと、そうした考え方が大衆のものになる日
は近づかないという気もします。

 話は突然変わりますが、Kyon2が復活の兆しとか、テレビでやっていました。
今年は交通事故とかいろいろあり、本人も充電中だとか書いていましたしね。

 では、次回まで






経済ニュースゼミ(第100号) 2005年9月2日
皆さん、こんにちは、Seijiです。
米国は、ハリケーンの被害で大変ですね。沢山の人が犠牲になっているだけでなく、
経済にも大きな打撃を与え、さらに犯罪まで多発しているようです。
ブッシュ大統領は、「現在のような非常事態に法を犯す人々を許すことは絶対にでき
ない」と述べています。
そのとおりだと思いますが、こうした自然災害が起きるのも、地球温暖化が進展して
いることと無関係ではないかもしれません。また、被害に乗じて犯罪が起きるのも、
米国内で貧富の差が拡大していることと無関係ではないかもしれません。
取敢えずは、災害からの復旧が肝心でしょうが、少し落ち着いたら、長期的観点から
政策の見直しも必要なのではないでしょうか。
 
では、経済ニュースゼミを始めましょう。


<本日のメニュー>
 1.経済ニュース解説
 2.経済政策論争
 3.経済学基礎講座(死荷重)
 4.編集後記
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経済ニュース解説
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■米ハリケーン被害
 連日米ハリケーンの被害状況が報じられています。米大統領は「過去最悪の自然災
害」と言及していますが、昨年末のインド洋大津波の時と同じように、対応が若干遅
い気がします。
 それはそうと、「石油パイプライン寸断」、「精製能力1割喪失」と報道されている
ようにアメリカのエネルギー供給に大きな影響を与えています。(日経、9月2日)ま
た、急速に治安が悪化していることが気になります。

 ところで、この被害でガソリンの値段が高騰していますが、カリフォルニア州で
は、ある上院議員がガソリン価格を規制する法案を今週にも州議会に提出することを
明らかにしたとあります。但し、価格規制には反対意見も多く可決されるかどうかは
不明だとあります。

 皆さんは、この種の価格規制に賛成されますか?また、反対意見の根拠は何だと思
いますか?(反対意見の根拠は、編集後記で)

■物価の動向
 「セブンイレブン飲料値下げ 低価格店に対抗」とあります。(日経、9月2日)
 コンビニのセブンイレブンが、「コカ・コーラ」や「おーいお茶」など500ミリリッ
トル入りの清涼飲料を、147円から125円に、22円も値下げ(15%)するとあります。
ドラッグストアや100円ショップに対抗するためらしいですが、セブンイレブンの売上
は、既存店ベースでみると、この7月まで12ヶ月連続で前年比マイナスになっているら
しく、売上回復が急務のようであります。

 ところで、確かに値下げをすると数量的には売上が回復すると予想されますが、値
段が15%も引き下げられているので、数量ベースでは約18%以上回復しないと売上高
の増加につながりません。(100円のコーラが100本売れていたのを、15%値下げし
て、1本85円にしたとする。以前と同じ10000円の売上を上げるためには、117.6本売る
必要がある)
 この対策が効果があるかどうかは、セブンイレブンのお客さんが、値下げにどれだ
け敏感に反応するかにかかっていると思います。余り値下げに反応しないようだった
ら、数量の伸びも限られ、却って売上減になるかもしれません。

 いずれにしても今回、セブンイレブンが、ナショナルブランドの清涼飲料は、メー
カー希望価格で売るというこれまでの慣習を変更することによって、値下げ圧力が強
くなりそうです。

 一方、企業の人手不足感が「バブル期に迫る水準」とあります。(日経、9月2日)
 8月の労働経済動向調査によると、常用労働者が「不足」と答えた企業は、「過剰」
と答えた企業を16ポイント上回ったとあります。前回の5月から3ポイント上昇し、
1992年11月とほぼ同水準だということです。

 我が国においては、物価上昇の可能性は極めて低い状況にありますが、こうした雇
用情勢が先々じわじわ利いてくることも考えられます。その前提としては、金融機関
の貸出残高がプラスに転じるなどの環境の変化が必要でしょうが、いつまでも、マイ
ナスの物価が続くと勝手に想定するのは危険でしょう。

以上
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経済政策論争
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 日経新聞の「経済教室」で、岩田規久男教授と吉富勝経済産業研究所長が、相異な
る持論を展開しています。(日経、9月1日、2日)

 岩田教授は、「構造改革の成果をマクロ経済的成果として実現させるためには、イ
ンフレ目標政策の導入によりインフレ率を長期的に2−3%程度に安定させる必要があ
る」と主張し、インフレターゲット論を久々に展開しています。
 一方、吉富所長は、「経済の動きを説明する通説や俗説は多いが、たゆまぬ検証が
求められる。まず、デフレである限り、景気は回復せず、好況は望めないという通説
から撃ってみたい」とし、前述の岩田教授などが主張している通説を批判していま
す。

 デフレであると景気が回復しないという考え方の論拠は二つあり、それは、デフレ
により実質金利が高くなることと、物価の下落を想定し、消費を先延ばしにすること
です。

 吉富所長は、最近の日本では、実際それほど実質金利が高かったわけではないこと
(0.2%程度)を示した上で、景気の後退は、企業の利潤率が低すぎたことに原因があ
るとし、通説を批判しています。
 さらに、現在我が国は、インフレを心配する必要がなく、インフレの火種もない
が、1.5%程度の潜在成長路線で好況を迎えている(このような状態を、「日銀は今、
桃源郷の中にある」と表現)としています。

 岩田教授は、英国や豪州の経験から、我が国もインフレ目標政策を導入すべきだと
の結論に達しますが、吉富所長は、「真の政策課題は、この成長路線を高めるイノベ
ーション(革新)の促進や、公的金融、年金を含む総合的な政策パッケージの形成な
のである」としています。

以上


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経済学基礎講座
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【研一】
 財の売り買いに政府が課税した場合、どちらが実際その税を払おうと、実質的な負
担がどうなるかは別の問題なんだ。これを税の帰着の問題と言うのだよ。
【中洲先生】
 格好いいね。勉強したのかな。
【佳子】
 税の帰着は分かったけど、いずれにしても課税されると、えーなんだっけ‥、そう
そう、死荷重というのが発生するんでしたよね。
【中洲先生】
 研一君、勉強しているみたいだから、死加重のことも少し正確に説明できるかな。


【研一】
 佳子ちゃんはこの前、「死荷重は、税金がかかったことにより、財の値段が上がっ
て、その結果、買い手の購買意欲が落ち売買される量が減る」というようなことを言
ったみたいですけど‥
【佳子】
 間違っている?
【研一】
 経済学的に言うと、消費者余剰と生産者余剰を合計した総余剰が、課税とよって減
じることを言うのだよ。
【佳子】
 そんな説明誰も理解できないよ。
 そんなことを言うから、経済学は敬遠されるのよ。
 大体余剰ってなによ。何か余ったもの?
【研一】
 先生、助けて下さい。


【中洲先生】
 消費者余剰とは、消費者の厚生のこと。
【佳子】
 厚生?
【中洲先生】
 例えば、ある車が何台か市場に売りに出されているとする。
 Aさんは、300万円出してもいいと思う。Bさんは270万円、Cさんは200万円。
 ところが、その車は、180万円の値段がついていた。
 となると、どうなる?
【佳子】
 非現実的な仮定だけど‥
【中洲先生】
 そう言わず。
【佳子】
 AさんもBさんも、自分が出してもいいと思った値段より安いので買うわね。売買
成立。
【研一】
 Cさんは?
【佳子】
 Cさんは気が変わって買わないかな‥。或いはもう少しまからないかと頼むかな。
【研一】
 あのね。


【中洲先生】
 AさんもBさんもCさんも、自分が払っていいと思う許容額が、実際の支払額を上
回っているよね。Aさんは120万円、Bさんは90万円、Cさんは20万円。合計で230万
円の余剰だ。
【佳子】
 余剰って、そういうことですか。
【中洲先生】
 そうそう、それが余剰。消費者余剰は、支払許容額から支払額を差し引いた額。生
産者余剰は、受取金額から費用を差し引いた額。
 で、これらの車の取引に課税されるとする。1台当り100万円。
 どうなる?
【佳子】
 どうなるって‥、課税されるとしても、税の帰着の問題があるんでしょ。
【中洲先生】
 問題を単純化するために、売り手は、受取金額が少しでも減ると、車を売らないと
仮定して。要するに買い手が、税を全部負担するとして。


【佳子】
 じゃあ、180万円の車が280万円になるのね。
 Aさんは車を買うけど、BさんとCさんは諦めるわね。
【中洲先生】
 消費者余剰は?
【研一】
 Aさんは、20万円の余剰がありますけど、BさんとCさんの余剰は消えました。
【佳子】
 じゃあ、230万円の余剰が20万円まで減少?
【中洲先生】
 でも、逆に政府が手にするものがあるよね。税収。
【研一】
 税収は、1台の取引だけだから100万円ですね。
【中洲先生】
 税収は、政府の余剰となり、総余剰は、120万円だ。だから、余剰の減少分は110万円。
【研一】
 110万円というのは、課税される前のBさんとCさんの余剰の合計ですよね。
【中洲先生】
 この110万円分が死荷重になるんだよ。
【佳子】
 それが死荷重なのか。


【中洲先生】
 佳子ちゃんの言うように、課税によって車の値段が上がる分、買い手は購買意欲が
なくなり、取引量が減少したよね。課税前は、3台売れたのが、1台に減った。
 その1台を買ったAさんの余剰は減少し、その減少分は税収というかたちで補われて
いる。しかし、BさんとCさんの余剰は、消えてなくなったままだ。これが
deadweight loss。

次回に続く



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編集後記
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 昨日、セミの鳴き声がクマゼミからツクツクボーシに変わっていることに気が付き
ました。なんだかんだと言っても時は移ります。

 ところで、アメリカでは、度重なるハリケーンの被害に遭って、地球温暖化対策の
必要性を感じないのでしょうか?

 ガソリンの価格規制の問題ですが、価格を規制すると、ガソリン不足が発生し、消
費者のためにならないというのが経済学の教科書が教える考え方です。不足が発生す
るのは、価格が低く抑えられると、売り手が売ってもいいと思う量が減るからです。
 オイルショックの時に、随分この種の経験をしたはずなのですが‥
 理屈は分かっているけど、何かやらないと選挙民の受けがよくないと考えるのでし
ょうか。

 選挙と言えば、与野党いろいろ言い合っていますが、わざと相手のことを悪く言っ
て議論が噛合わなくなっていますね。それこそ税金がもったいないような。

 選挙ついでにもう一言。
 東京の商店街で、選挙した人に割引があるとか‥。そこまでしないと選挙にいかな
いのでしょうか。寂しいですね。
 
 ただ、その一方で、「貴方の一票が政治を変える」と言われても‥
 心情的には大賛成ですが、完全競争状態にある市場の一参加者と同じで、「価格受
容者」に過ぎないですよね。決して、1人では「価格設定者」になれません。それなの
に、「貴方の一票が政治を変える」という言葉を信じて投票すると、その後の失望と
反動が大きいというものです。
 
 ですから、ここはpolitically correct な方法で表現すると、「貴方の一票は、単
なる一票である限りほぼ何の影響力ももたないけど、同じような考えの人が沢山集ま
ると、影響力を持ちますよ。投票すれば、少なくともやれることをやったという気持
ちにはなれます」とでもなりましょうか。



 
 では、また次回まで






経済ニュースゼミ(第101号) 2005年9月5日
皆さん、こんにちは、Seijiです。
日本も、台風14号の被害が予想されますが、米国のハリケーンの被害は、桁が違いま
すね。
ところで、東京は、昨夜は1時間当たり100ミリを超える豪雨があったようですが、最
近こういう豪雨が珍しくなくなりましたね。
注意して下さい。

では、経済ニュースゼミを始めましょう。


<本日のメニュー>
1.経済ニュース解説
2.最低賃金法
3.経済学基礎講座(消費者余剰)
4.編集後記

★★★★★★★★★
経済ニュース解説
★★★★★★★★★

 米国のハリケーン被害の関係の記事が紙面を占領しています。関連記事を整理して
みましょう。

■ガソリン買いだめ自粛要請
 「大統領、買いだめ自粛要請」「各地でガソリン高騰 ニューヨークでは4ドル台も」
(日経夕刊、9月2日)
レギュラーガソリンが1ガロン3−4ドル台に達する店が現れ始め、ハリケーン直撃以
前と比べ、1ドル以上値上がりしているらしい。このため、米大統領は、石油供給に一
時的な支障が出ると警告した上で、米国民に必要以上のガソリンを買わないよう異例
の要請をしたとあります。

しかし、この要請は意味があるものでしょうか。

 先日紹介したとおり、石油価格統制の動きもあるらしいのですが、エコノミストの
多くは、こうした買いだめ自粛要請や価格統制が経済学的には意味のないものだと主
張しています。
 買いだめが起こるから価格が高騰しているのではなく、供給不足が懸念されるの
で、買いだめに走るのです。勿論、買いだめが起これば供給不足を助長しますが、
買いだめをしても、将来供給が十分回復し価格が下がれば、買いだめをした人が損を
する可能性もあります。買いだめをする人は、そうしたリスクも抱えています。

 結局、経済学的に考えれば、価格を統制するよりも、価格の自然な高騰を見逃す方
が、需要と供給を均等させる最善の方策ということです。

 但し、政治家としては、経済学者の意見にただ従うということだけでは責任を果し
たしたことにはならないと考え、つい何かをしたくなるというのでしょうか。

■原油原単位(エネルギー効率)
 「原油高騰でも内需に耐久力」(日経、9月3日)
 原油高騰が及ぼす影響力が過去に比べ徐々に小さくなっていることは、既に知られ
ています。エネルギー効率が向上している国ほど、原油高に対し耐久力を持つという
ことですが、それが「原油原単位」という指標で分かるらしいのです。

 原油原単位は、原油消費量を実質GDPで割って求めた数値ですが、2004年時点で、我
が国は、原油原単位指数が44(1990年の米国の水準を100とする)であり、米国は79、
中国は184であるということです。

 この指数から見る限り、中国や米国は、我が国と比べ遥かに多量のエネルギーを消
費する国と言えます。
 米国では常日頃、原油価格高騰が及ぼす経済成長への悪影響について関心が払われ
ていますが、その割には、エネルギー効率を高めようとする努力が欠けているように
も思えます。
 そう言えば、トヨタに押され続けているあのGMも石油を多量に消費する大型車を主
力商品とする戦略から抜け出さないと言います。
 今回のハリケーン被害による石油高騰を教訓として、米国はエネルギー効率を高め
るよう官民ともに努力すべきなのではないでしょうか。

■米経済損失11兆円 米ハリケーン被害(日経、9月4日)
 今回のブッシュ政権の対応については、大きな批判が寄せられています。水や食料
などの補給が遅れているかららしいですが、批判の原因は、ブッシュ大統領の言動か
らも窺い知れることができます。

 ブッシュ大統領は、「堤防の決壊は誰も予想していなかった」と述べましたが、実
際には専門家の多くが堤防の脆弱さを警告していたらしいのです。それにも関わら
ず、堤防の改修予算は削られたということです。(日経、9月5日)
 さらに、ブッシュ大統領が最初に長時間協議をしたのは、グリーンスパン議長だと
いうことです。グリーンスパン議長との協議ですから、内容は、経済への影響がどの
程度のものか、さらに、今後どのような経済政策をとるべきかが中心となったはず
です。
 その結果、昨年の6月以来続いている小刻みな金利引き上げを一時中止すべきかが関
心を呼んでいるようです。

 確かに、米国経済の動向は、世界にも大きな影響を与えるために、今回のハリケー
ン被害がもたらす経済的被害の評価は慎重に行なうべきものでしょう。しかし、現実
に、多数の人々が、水没した町で、水や食料を求めている姿がそこにあるのです。

 ブッシュ政権は、プライオリティを何に置くかで、判断ミスを犯したと言う他ない
でしょう。


以上




★★★★★★
最低賃金法
★★★★★★

 9月5日の日経新聞に、「最低賃金法 問題あり!?」とあります。
 法で定めた水準を下回る低賃金しか支給しない企業が中小を中心に後を絶たないと
いうことです。

 確かに、最低賃金法は、政治家や法律家の立場からは、弱きものを救う正義の味方
ですし、法を守らない企業は悪質であるように思えます。
 しかし、経済学のテキストでは、最低賃金法は、市場メカニズムを歪める悪者とし
て登場します。

 自由な市場で需要と供給が均衡することによって成立する価格(賃金)を人為的に
高目に保とうとすると、需要者の立場からは、コスト高になり人を雇うとする意欲が
薄れ、他方、供給者の立場からは、賃金が上昇することにより、より職を求める人の
数が増えるためです。この結果、失業率が高まり、労働者全体としての利益は却って
損なわれると考えるからです。

 我が国の場合、最低賃金の一般労働者の平均賃金に対する割合は、米国と同じく
34.9%(1997年)であり、50%を超えるフランスやベルギーなどと比べれば相当低い
ので、経済学の教科書が指摘する弊害はそれほど大きくないかも知れません。

 しかし、法律家の立場からは、我が国の最低賃金の水準(東京で、1ヶ月22日間働い
た場合、12万6千円)は、生活保護の受給額約14万円(18歳、単身者)に満たないとい
うことで、アンフェアに映るものらしいということです。
========
経済学基礎講座
========

【佳子】
 財の取引に政府が課税すると、価格が上昇し取引量が減少するので、消費者余剰が
減少するということか。
【研一】
 佳子ちゃんも、死荷重のことが理解できたみたいだね。
【佳子】
 理解できたような、できないような。
【研一】
 何が理解できないの?
【佳子】
 余剰というやつ。
【研一】
 それは、この前、中洲先生が具体的に説明してくれたじゃないか。
 自分が払ってもいいと考える支払許容額と実際の支払額、つまり購入価格の差。
 生産者余剰の場合は、生産コストと売払い価格の差。


【佳子】
 だけど、支払い許容額なんて皆本当に考えるのかな。仮に考えても、購入した後
になって、こんなもの買うのじゃなかったと考える場合もあるよ。そういう場合で
も、厚生が存在すると考えるものなの?
【研一】
 そう言われれば、現実には値段を見ずに買うものだってないわけではないけど‥
 だけど、だからと言って、市場以外にモノの値段を上手く決める方法はないように
思えるけど。
【佳子】
 見えざる手というやつでしょ。
【研一】
 そう。アダムスミスの言う神の見えざる手。どんなに市場参加者が利己的であって
も、むしろ利己的であるから、需要と供給が均衡するところで価格が決まる。そこで
厚生が最大になる。
 市場が効率的であるというのは、その厚生が最大になることが保証されるというこ
とだ。


【佳子】
 その厚生を消費者余剰や生産者余剰で測るのでしょ。
 生産者余剰は、分かりやすいのよね。だって、売り払い価格から経費を引いた分を
言うのでしょ。要するに儲けということだからね。
 だけど、消費者余剰というのは、ちょっとね。
 厚生というからには、財を購入したときの満足感が大きいかどうかが問題なんじゃ
ないの?
【研一】
 それはそうだよ。その満足感が、このくらいまでなら払っていいという支払許容額
で分かるじゃないか。
【佳子】
 だけど、支払許容額は、お金持ちほど高くなる。
 お金を持っていない人は、仮にそれが買えたらどんなにか満足するか分からないの
に、支払許容額は低くなる。だから、厚生という言葉はしっくりこないのよ。
【中洲先生】
 確かに、佳子ちゃんの言うことも一理あるね。お金持ちは、支払許容額が高いか
ら、何でも買えちゃう。要するに世の中の財、生産物はお金持ちに集中するかもしれ
ない。そうではなく、貧乏な人も財を手に出来るような状態の方が、社会的な厚生は
大きいんじゃないのかというのだよね。
【佳子】
 そうそう、そういうこと。


【研一】
 確かに、正義とか公平ということを考えたら、そういうことも必要かもしれない。
 でも。
【佳子】
 でも、何?
【研一】
 でも、そういうことをすると、貧乏な人が安い価格で購入できるシステムを考えな
ければいけなくなる。
 しかし、市場は、より高い値段をつけた人が購入のチャンスが高く、また、より安
い値段を付けた人が売却のチャンスが高いようになっている。当たり前だけど。
 それに、佳子ちゃんが売り手の立場だったとして、幾ら貧乏な人の方がより満足し
てくれるかも知れないと思いつつも、損を出してまで商売はできないだろう?
【佳子】
 それはそうね。ビジネスはビジネス。
【研一】
 だからビジネスである限り、市場のメカニズムというのは尊重すべきなのだと思う
よ。
 貧乏な人に対する配慮は、市場が行なうものではなく、別途政府が政策を講じて行
なえばいいのさ。


【中洲先生】
 要するに、厚生とか消費者余剰というものは、その程度の「厚生」と理解しなけれ
ばならないということさ。
 愛に満ち溢れた概念でもないし、実際の満足感を反映するとも限らない。
【佳子】
 でも、経済学者は、そうした「厚生」を重視するのでしょ。
【中洲先生】
 そうだね。そうでなければ、厚生が減少する死荷重が発生しても、そんなに大騒ぎ
する訳はないものね。
 財の取引に対する課税や、国際貿易における関税や輸入割り当てに多くの経済学者
が反対するのも、「厚生」が減少するという理由からだからね。


次回に続く

=====
編集後記
=====

 台風14号が近づいています。
 しかし、本当に動きがゆっくりとしてますね。

 台風の目がはっきりしているのが不気味です。
 皆さん注意して下さいね。

 米国では、ハリケーン被害で米大統領と中国の国家主席と会談がキャンセルになっ
たとか。



 では 






経済ニュースゼミ(第102号) 2005年9月7日
皆さん、こんにちは、Seijiです。
台風14号はまだ北上中ですが、西日本各地の被害は大変です。
ところで被害状況を比べると、台風が通過した福岡よりも中心からそれていた宮崎や
大分の被害の方が酷かったですね。
天気図の読み方にも勉強が必要なようです。

では、経済ニュースゼミを始めましょう。


<本日のメニュー>
1.経済ニュース解説
2.経済学基礎講座(市場の失敗)
3.編集後記
★★★★★★★★★
経済ニュース解説
★★★★★★★★★

■ダイエーの人員削減
 「ダイエー1500人削減 一般社員から希望退職」とある。(日経、9月7日)
 ダイエーは産業再生機構の支援下にあり再建の最中だが、11月に一般社員の希望退
職を実施し、1500人規模で人員を削減するらしい。「今秋以降約600億円を投じた店舗
改装や新型食品スーパーの出店など新規投資を本格的に再開する」ともある。

 先日ダイエーの支店が何店か廃止になるということがテレビで報道されたとき、感
想を求められた人が、「なくなると不便になり困ります」というような返答をしてい
たことを記憶しているが、たとえ再生機構入りしても、廃止すべきものは廃止し、削
減すべきものは削減するということか。
 であるとすれば、そもそもダイエーについても、通常のルールに従って処分しても
よかったのではないかという疑問が頭をもたげる。

 だが、あの当時は株価も低迷し、とてもダイエーを破綻させることはできないと政
治家が判断した。結局、よく言えば、穏便な方法を選んだことになり、悪く言えば時
間稼ぎをしたということか。

 今、「官から民へ」とか、「小さな政府」とかが盛んに言われているが、再生機構の存
在は「小さな政府」の考えとは反するものである。

 それはそうと、今後のダイエーの再生の見通しはどうであろうか。
 時間稼ぎしたことの是非はこの際置くとして、再生機構入りによって明らかになっ
たことは、経営陣の選択にも「市場の原理」が適用されず、官の論理が優先したとい
うことである。その官の論理によって選任された経営陣によって、ダイエーの再建が
今進められている。

==============
経済学基礎講座(市場の失敗)
==============
【研一】
 経済学者は、市場が効率的だと考えるのですよね。
【中洲先生】
 市場によって最も大きな厚生を感じる消費者と生産者との間での取引が可能になるらね。
【佳子】
 消費者と生産者の余剰が最大になるというのでしょ。
 でもいつもそうなのかな。


【中洲先生】
 経済学者も、市場がいつも効率的だと考える訳ではないのだよ。
 どういう場合か分かるかな?
【研一】
 独占状態にあると市場は効率的に働かないですよね。
【佳子】
 どうして?
【研一】
 だって、独占状態にあると、供給者が好きな供給量と価格を選択できるから。
 つまり、需要と供給の力関係が均衡してないということさ。その結果、効率的でな
くなる。
【中洲先生】
 効率的でないとは、余剰が最大になっていないということだったよね。
 この前、独占状態にあるときは、死荷重が発生すると言っただろう。死荷重は、余
剰の減少を表す。そのことから、独占状態においては、効率的でないことが分かる
ね。


【佳子】
 公害などについても、市場は、対応できないですよね?
【中洲先生】
 公害と言ってもいろいろあるけど、例えば、車の大気汚染。
 車の売買は、大気を汚染するという、買い手と売り手以外の第三者にも影響を及ぼ
す。「外部性」と言うけど。
 車の売買は、市場を通して買い手と売り手の間では、効率的に行なわれるのだけ
ど‥
 だけど、大気汚染が発生し、他人に迷惑がかかる。そのため、大気汚染によって健
康に影響が出るかもしれない。そうなると医療費がかかる。そうなると、自動車の値
段は、単に買い手と売り手の都合だけではなく、他人の健康対策の費用も考慮に入れ
て決定しないと、社会全体としてはおかしいということになる。


【佳子】
 だけど、市場は、買い手と売り手の事情しか反映しないのでしょ。
【中洲先生】
 だから、車の取引に課税をし、その税収で健康対策の費用に充てることが考えられ
る。
【研一】
 そうなると、車の値段は上がりますね。それに取引量は減少する。
【佳子】
 車の売買量が減るだけでも、大気汚染は減るわね。
【研一】
 それに、課税によって得られた税収で、健康対策ができる。
 もっとも、課税するから死荷重は発生するけど‥


【佳子】
 死荷重が発生することはどのように考えるのかな?
【中洲先生】
 死荷重が発生するといっても、そもそも買い手と売り手の余剰の合計には、健康被
害という「損失」が考慮されていないからね。税収によって、その「損失」が補填す
ることができればよしとするのだろうね。
【佳子】
 とすると、市場の失敗と言いつつも、課税することによって市場の機能を補正する
ことができるというの?
【中洲先生】
 まあ、そういうこともあるということかな。
 いずれにしても、独占のような「市場支配力」と「外部性」によって市場の失敗がも
たらされる。

次回に続く
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編集後記
======
 台風の被害が拡大していますね。
 被害に遭われた方にお見舞い申し上げます。

 分量が少なく済みませんが、本日はこれにて。


 では、次回まで。






経済ニュースゼミ(第103号) 2005年9月9日
皆さん、こんにちは、Seijiです。
台風14号が過ぎたかと思ったら、もう15号が近づいているみたいですね。
そう言えば昨年も台風がよく来ました。

では、経済ニュースゼミを始めましょう。


<本日のメニュー>
 1.経済ニュース解説
 2.経済学基礎講座(キャベツの経済学)
 3.編集後記


★★★★★★★★
経済ニュース解説
★★★★★★★★
■民間銀行の貸出残高が増加へ
 銀行の貸出残高が久しぶりに増加に転じている。景気回復を反映してのことだろう
か。
「銀行貸し出し初のプラス 98年以降」(日経夕刊、9月8日)
「銀行貸し出し 浮上中 8月の残高プラス」(日経、9月9日)

 日銀が8日に発表した8月の「貸出・資金吸収動向」によると、民間銀行の貸出残高
は、前年同月比0.2%増の386兆9922億円となったとある。
 「景気回復を背景に民間の資金需要が盛り返していることなどが背景」で、「中小
企業などの資金需要の回復と住宅ローンなど個人向け融資の拡大がある」とのこと
だ。
 業態別にみると、地方銀行が4.3%の増加となっているが、大手銀行は2%の減少に
とどまっている。
 この民間銀行の貸出残高だが、7年前の1998年には500兆円を超していた。よくもこ
れだけ減少したものだ。しかし、減少がストップしたことが確認されただけでも安心
材料になるだろう。

 朝日新聞は、この銀行の貸出残高増加について、「量的緩和政策の効果がようや
く、景気回復とともに、中小企業をはじめ民間経済の末端まで波及してきた表れとも
言えそうだ」(9月8日、夕刊)と解説しているが、根拠が薄弱なのではなかろうか。
何故ならば、大企業の多くは、手元流動性が豊かになっており、借入需要は強まって
いないからである。そのことは、大手銀行の貸出残高が依然マイナスであること或い
は、製造業向けの貸出残高が減少基調であることからも推測できる。

 むしろ、不良債権の処理が峠を越えたことに加え、不動産向けなどの融資が伸びて
いることが原因であり、そのことは恐らく「量的緩和政策」とは関係がないと見るべ
きであろう。

■ハリケーン被害とガソリン価格の関係
 米国では、ここにきて怒りの矛先が石油高で大きな利益を得ている大手石油会社や
投機筋に集中しているようだ。
「米議会、石油会社を批判 消費者に利益還元を」(日経夕刊、9月7日)
「便乗批判 米で強まる」(朝日、9月9日)

 米議会の動きを見てみよう。
・民主党ドーガン上院議員が6日、価格高騰で米石油会社が得た超過利潤を米消費者に
 還元する法案を提出すると発表。
・民主党レビン上院議員は6日、ガソリン価格をハリケーン直撃前の水準まで強制的に
 引下げさせる権限を大統領に与える法案を緊急提出。
・米上院エネルギー委員会のドメニチ委員長は、石油供給不足に便乗した不当なガソ
 リン価格の引き上げは許せないと強調。
・民主党ワイデン議員は、ニューヨークの石油先物市場で投機筋が距離を得ており、
 そのしわ寄せが石油高騰という形で米消費者に来ていると批判。

 こうした批判があるためか、ニュージャージー州政府が給油所を立ち入りしたとこ
ろ州の規則に違反して24時間に2回以上値上げする例や、掲示価格より高い価格を請求
するなどの違反が見つかったとある。(朝日)

 しかし、冷静に考えると、ハリケーンがとてつもない損害を与え、石油精製量が元
の水準まで回復するには2ヶ月前後かかるとエネルギー省自身が認めているのだから、
価格が高騰しない方が、むしろ不自然だ。

 供給量が減少したことに対して価格が大きく反応しているというのは、それだけ需
要の価格弾力性が硬直的だということだ。つまり、ガソリンは生活必需品であって、
消費者は最低限のガソリンは確保しないと生活できないと考えるので、その限られた
ガソリンを巡って、価格が高騰するのだ。

 ガソリンの高騰を抑えることによって、社会的な不満を抑えたいのであれば、一挙
に備蓄を放出するか、米国民に、この際ガソリンの消費を控えることを呼びかけるこ
とが本筋であると考えるが如何であろうか。

 なお、米国のガソリン価格は、高騰したとしても日本よりはまだ低い水準にある。
 京都議定書に調印していない米国は、そうしたことをよく認識すべきでないのか。



以上


=================
経済学基礎講座(キャベツの経済学)
=================


【研一】
 農作物がよくとれるのは農家にとっていいことかと思ったら、そうでもないみたい
ですね。
【佳子】
 あらどうしたの?
【中洲先生】
 キャベツのことかい?
【研一】
 そうです、キャベツです。
【佳子】
 キャベツがどうかしたの?
【研一】
 テレビでやっていたのだけど、キャベツが取れすぎて、値崩れし、市場まで運ぶ運
送費にさえ満たないというのさ。それで、キャベツを廃棄処分にすると。
【佳子】
 廃棄処分にするくらいだったら、無料で配ればいいのにね。
【中洲先生】
 でも、そうすると、お店でキャベツを買う人がいなくなるからね。同じことになる
よ。


【研一】
 キャベツの廃棄処分ですけど、どうやるか知っています?
【中洲先生】
 私もその番組みたよ。佳子ちゃんは分かるかな?
【佳子】
 とりあえず収穫して、それをどっかに捨てるのかな。
【研一】
 まず、収穫前のキャベツ畑を写真でとって、そして、トラクターをキャベツ畑に走
らせる。そうすると、キャベツが一遍で粉々。そして、写真をとると。あっという間
に終わってしまう。育てるのに90日かかるらしいけど、廃棄は5分か10分かということ
だよ。
【佳子】
 写真は、何のためにとるの?
【研一】
 記念じゃないよ。ちゃんと廃棄した証拠になる。廃棄すると補助金が出る仕組みに
なっているらしいよ。それで、損害を少しでも食い止めるためだとか。でも農家は赤
字になるとか言っていたけど‥
【中洲先生】
 でも、折角作ったものを廃棄するのは忍びないね。


【佳子】
 何でも出来すぎたら、値崩れがするものなのかな?
【研一】
 キャベツも、値段が下がると最初はどんどん売れるらしい。しかし、次の日から
は、値段が下がっていても、それほど売れなくなる、そうすると、もっと値段が下が
るということじゃないのかな。
【佳子】
 毎日キャベツ料理ともいかないしね。


【研一】
 マツタケだとどうなると思う?
【佳子】
 そう言えばマツタケの季節ね。マツタケなら、安くなると結構売れるかもしれない
ね。普段買えない人たちもマツタケを買うかもしれないし‥
【中洲先生】
 結局、我々の食生活は短期間のうちには大きく変わることはないからね。毎年食べ
るお米の量や、野菜の量、魚や肉の量は大体決まっている。それが確保できないと、
価格は高騰するし、それを大きく上回って供給されると値下がりすると言う訳だ。
 だから、マツタケが沢山取れたら、キャベツよりも値崩れせずに売れるかもしれな
いけど、所詮食べ物だし、保存が利かないから、売り手の方も短期間で捌く必要があ
るから、そうなると一遍に値段が下がる可能性もあるよね。
【佳子】
 じゃあ、干し椎茸ならぬ干しマツタケとして売り出すことを考えたら?
【研一】
 その場合は、需要曲線がシフトして、マツタケに対する需要が増えるので、供給量
が一定だと値段が上がるよね。


【中洲先生】
 結局、ある財の価格の変動に対して、需要が弾力的かどうかが決め手になるという
ことだね。価格が下落しても、それ以上に需要が増える効果の方が大きければ、売り
手の収入は増大するからね。キャベツの場合には、価格が下がっても需要がそれほど
増えないから、売り手の収入が激減するということさ。
 仮に、マツタケが豊作で、価格が下落しても、それ以上に需要が増大する効果の方
が大きければ、売り手の収入は増大する。そうなると、マツタケを廃棄処分するなど
ということは考えられない。
【佳子】
 そういうことか。
【研一】
 結局、キャベツの処分は、供給量を一定の量に保つことによって値崩れを防ぎ、生
産者の収入を確保するために行なうのですね。


【佳子】
 だったら、自分ひとりだけキャベツを処分しないで、市場に送ったらどうなるの?
 他の人たちが処分してくれれば、キャベツも値崩れしていないので、自分だけ、大
儲けできると思うけど‥
【中洲先生】
 でも皆がそんなことを考えると、誰も処分をせず、皆が損をすることになるから
ね。
【研一】
 そうすると、皆で相談し、ちゃんと約束を守ることが必要になるんですね。
【中洲先生】
 だから写真をとるということになる。
【研一】
 いずれにしても、一生懸命努力して、豊作になったら、自分たちの首をしめること
になるなんて気の毒ですね。



次回に続く


======
編集後記
======

 台風の被害が報道されています。
 港は、多くの量の流木が海面を覆いつくしています。その流木に狸が乗っていまし
た。こうした被害は選挙行動に何らかの影響を与えるでしょうか。

 「小さな政府」がいいと言っても、自然災害に対する対策は、市場任せにすること
は出来ません。こういう時こそ、政府の出番です。
 
 ただ、だからと言って、アメリカのように法律でガソリンの値段まで統制するのは
少し行き過ぎのような‥

 少し、冷静さを失っているのですね。
 アメリカに対する見方が少し変わりました。


 では、次回まで。







経済ニュースゼミ(第104号) 2005年9月12日
皆さん、こんにちは、Seijiです。
選挙は、自民の圧勝でした。選挙前から自民が優性だと言われていましたが、ここま
で勝つとはというのが率直な感想です。
民主が漁夫の利を得るのではと思っていましが、「刺客効果」で、自民党のお家騒動
に目が奪われた結果でしょうか。

では、経済ニュースゼミを始めましょう。


<本日のメニュー>
 1.経済ニュース解説
 2.経済学基礎講座(農家の経済学)
 3.編集後記
★★★★★★★★
経済ニュース解説
★★★★★★★★

■石油高騰
 連日、石油高騰の関係の記事が紙面を占領しているかのようだ。
 「石油価格抑制策 見直しへ アジア各国の財政を圧迫」(日経、9月10日)
 「原油高・ハリケーン被害 各国、省エネに走る」(日経、9月10日)
 「原油価格の高騰(ニュース入門)」(日経、9月11日)
 「静かな石油危機の到来 高値への対応課題」(日経、9月12日)

 アジア各国がこれまで石油価格を低く抑えるために採ってきた補助金政策が行き詰
っているらしい。原油価格の高騰で補助金支出額が膨らみ、財政を圧迫しているから
だ。

 <各国の状況>
・ベトナム    統制価格を今年に入り3度引き上げ(年初からの値上がり率は33%)。
          補助金は徐々に削減せざるを得ない。

・マレーシア   統制価格を今年に入り14%引上げた。補助金制度見直しを視野に。

・インド      今年2度目の値上げを決定。補助金見直しが急務に。

・中国      統制価格を引上げる可能性大。

・タイ      7月、軽油価格を自由化。統制価格制度を撤廃。

・インドネシア  補助金膨張による財政赤字の拡大で、通貨ルピアが下落。
           補助金を撤廃する方針。
 
 今後は各国で統制価格が撤廃され、石油価格の自由化が進むと予想されるが、逆の
見方をすると、石油の価格というのは、どこの国にとっても大変重要な問題だという
ことが改めて認識できる。

 一方、先進国などでは省エネ対策を強化しつつあるとある。アメリカは、ブッシュ
大統領が「必要以上のガソリンを買わないように」国民に異例の要請をした他、運輸
省がSUVなど燃費向上を義務付けるとある。しかし、ブッシュ政権の省エネ対策につい
ては、「手ぬるい」との批判が強いらしい。

 そのアメリカであるが、どの位石油を消費しているのであろうか。
 実は、世界の原油消費の1/4はアメリカによるものであり、その半分が自動車による
ものとある。このことからもアメリカが省エネ対策に本気になるかどうかが、世界経
済にとってどれほど意味のなることかが窺い知れる。

 ところで、原油の価格が史上初めて1バレル70台に乗ったが、オイルショック時など
と比べて、比較的影響が限られているようにも思えるがそれは何故か。

 実は、1979年の第二次オイルショックのとき、原油価格は36.83ドル(北海ブレン
ト)に達したが、その水準は現在価値に直すと82.15ドルになるらしい。現在の水準
は、実質値で見る限り、過去のピークに達していないのだ。

 また、我が国のエネルギーの石油依存度の見ると、第一次オイルショック時の77%
から現在では52%まで低下し、また、備蓄量は、第一次オイルショック時の67日分か
ら172日分に増えている。このように石油依存度が低くなり、備えが充実していること
の効果も大きい。

 ただ、我が国の石油の中東依存度は、78%から86%へ増大しており、中東情勢の与
えるリスクは高まっていることには留意する必要があろう。

以上


===============
経済学基礎講座(農家の経済学)
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【佳子】
 豊作になったとしても喜べないというのは、悲しいことね。
 でも何か変じゃない?
【研一】
 何が?
【佳子】
 だって、農家の人は昔から収穫量が多くなるように努力してきているのでしょ。
 お米だって、昔は南の地方でしか育たなかったのが、徐々に北の地方でも栽培でき
るようになったし。
【研一】
 お米は、価格が統制されていたからね。豊作になっても価格が急落することはない
から。


【佳子】
 別にお米じゃなくてもいいのよ。農家の作物は、病気にかかりにくくするとか、味
を良くするだけではなく、生産量も増やす努力をしてきたわけでしょ。収穫量が増え
て損をするなら、どうしてそんな努力をしてきたのかな。
【研一】
 収穫量が増えれば増えるだけ価格が下がるのは、そのとおりだと思うけど、必ずし
も農家の収入が減るわけではないと思うよ。価格が下がった以上に売り上げ数量が増
加すれば、価格と数量を掛け合わせた結果の収入額は、増加するからね。
 収入が増えるかどうかは、その作物に対する需要の価格弾力性が大きいかどうかに
かかっている。
 キャベツのように値段が下がってもそれほど売上数量の増加が期待できなければ、
収入は激減するだろうけど‥


【中洲先生】
 それに味がいいのを作ることに成功すると、高くで売ることができるようになる
し、病気に強いようにすると、手間隙もかからなくなる。
【佳子】
 それはそうだけど‥
 保存が利けば買いだめすることも意味があるけど、野菜なんかはすぐしおれてしま
うでしょ。
【研一】
 それはそうだね。
【佳子】
 だから、結局農家の人たちは、作り過ぎたら駄目なのよ。結局自分たちが損するの
だから。
 だけど、それにもかかわらず、収穫量を上げる努力を続けている。そこがどうも‥

【中洲先生】
 じゃあ、収穫量が2倍になる新しいコーンが発見されたとして、佳子ちゃんがコーン
の農家だったら、その新しい品種を植えようとはしないかい?
【佳子】
 それは、やっぱり新しい品種に跳び付くと思うけど‥
 でも、そうやって他の農家も皆新しい品種を植えると、結局コーンが採れすぎて値
崩れを起こすよね。そうなったときにどうするのかな。
【研一】
 じゃあ、農家が皆で集まって、その新しい品種を採用するのを止めることにするの
かな。
 そうすれば、作りすぎて値崩れすることもないから‥
【中洲先生】
 でも、誰かが抜け駆けをしたら‥
【佳子】
 先生は、人を信じないの?
【研一】
 でも、実際、どこかに抜け駆けする人が出てきますよね。
 皆が、約束を守っていればいるほど、自分ひとりが抜け駆けしたときの利益は大き
くなるはずだから。


【中洲先生】
 仮に、新しい品種が出て多くの農家が新しい品種に切り替えるなか、自分だけが従
来の品種を育成しようとすると、全体としてその作物の価格が下落するのに加え、全
体の生産量に占める自分の生産量のウエイトまで縮小し、二重の意味で損するから
ね。
【佳子】
 じゃあ、どうしても新しい品種が出たら、それを採用することになるのね。


次回に続く


======
編集後記
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 選挙の結果ですが、皆さんはどう思いますか?
 昨日の朝刊に、小泉さんと岡田さんの顔写真入りの宣伝がそれぞれ掲載されていま
したよね。
 小泉さんは、首相就任時と同じような写真。岡田さんの写真は、最近撮ってもので
しょうが、やはり斜め上を睨んだような写真です。
 はっきり言って、あの写真受けがよくなかったのではないでしょうか。岡田さんの
堅物ぶりはよく物語っていますが、選挙民の受けはよくないと思います。
 政治家は人気商売でもありますが、岡田さんにはチャーミングさが感じられないの
ですよね。

 で、次は誰が党首になるのでしょうか。
 

 では次回まで






経済ニュースゼミ(第105号) 2005年9月14日
皆さん、こんにちは、Seijiです。
選挙で圧勝した小泉さんを朝のワイドショウではべた褒めのよう
ですが、数字で勝負がつく世界は明快なものですね。

では、経済ニュースゼミを始めましょう。


<本日のメニュー>
 1.経済ニュース解説
 2.経済学基礎講座(新古典派の分配理論)
 3.編集後記
★★★★★★★★
経済ニュース解説
★★★★★★★★


■石油価格の動向とその波紋
 アメリカにおける石油価格の動向が気になります。
 アメリカでは、ハリケーン対応の遅れについて、大統領が、「私が責任
を負う」と述べたと伝えられていますが、日経によれば、「カトリーナの
短期的なショックを、世界の経済や市場はひとまず吸収したようだ」とあ
ります。(「米ハリケーン 市場の混乱回避」9月13日)

 国際エネルギー機関(IEA)の決断が迅速だったことが功をそうしたよ
うです。IEAは、9月2日に、日米欧など加盟国の戦略石油備蓄の協調放出
の方針を発表し、石油が足りなくなるという不安心理を鎮めることに成功
したことになります。

  米国の株式市場も大きく値崩れすることはなかったようですが、これは、
「事故に売りなし」ということらしいです。
 「事故に売りなし」と言われても、いつもそうとは限らないと思いますが、
事故が起こっても、回復するのは時間の問題であると市場が冷静に受け止
めたということでしょうか?

 というようなことで、今週12日の米ガソリン平均小売価格は先週より
3.7%と下落したとあります。米政府が戦略石油備蓄の市場売却を決めたり、
メキシコ湾岸の製油所やパイプラインの復旧が徐々に進み始めたためだとさ
れています。(「米ガソリン価格下落」日経夕刊、9月13日)

 ところが、9月14日には、「米、原油高の転嫁広がる 素材・サービス値上
がり」(日経、9月14日)とあります。
 原油の価格が反転したと思って安心するのは早すぎたみたいです。ステン
レス鋼やポリエチレン製品が10%ほど値上げりする予定だとあります。

 今回のハリケーンの被害のため、金融政策は、これまで続けてきた小幅な
利上げを一時停止すべきではないかとの論調が強まっていましたが、原油高
の転嫁が広がり、物価があがるようですと、連邦準備制度理事会も金利引き
上げを続行せざるをえないと考えますが如何。

 それに比べわが日本。4−6月のGDP成長率が「3.3%成長に上方修正」(日
経夕刊、9月12日)されたようですが、量的緩和政策の内容に変更はないよ
うです。
 我が国においては、未だ消費者物価の上昇率がプラスとならず、量的緩和
政策が解除される条件が整っていないということらしいのですが、アメリカから
みるとうらやましく思えるのでしょうか。それとも、短期金利の引き上げにもか
かわらず長期金利が引き続き低いままであると同じように、日本の消費者物
価上昇率がプラスにならないことも謎に映るのでしょうか。



以上
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経済学基礎講座
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【佳子】
 新古典派の分配理論だなんて、急に難しくなりそうね。
 どんな話なのかな?
【中洲先生】
 とは言っても、この前の続きでお百姓さんの話。
【佳子】
 農家の経済の続きですか?
【中洲先生】
 昔々ある国で、移民が流入して農業労働者が急増しました。その時、実質賃金はど
うなるでしょうか、という問題。
【佳子】
 それ、真面目な質問?
【中洲先生】
 真面目な問題。
【研一】
 移民が増えて、農業に従事する人が増える訳ですから、農業生産高は増えますよ
ね。生産高が増えるということは、農業収入が増えると考えていいのかな?
【佳子】
 質問は、「実質賃金はどうなるか」ということですよね。ということは、移民の人
たちは誰かに雇われるのかな?
【中洲先生】
 農地や農具を所有する地主さんがいるとでも考えてよ。
【佳子】
 研一君は、農業労働者が急増すると生産高が増えるだろうと言ったけど、生産高が
増えすぎると、作物が値崩れするんじゃないのかな?


【中洲先生】
 ここは、教科書的に考えてみてよ。
【佳子】
 教科書的?
【研一】
 限界生産力逓減の法則というのですか?
【中洲先生】
 そのとおり。
【研一】
 移民が沢山増えて、農業労働者が増え続けると、その増加の程には生産は増えない
ということですね。
【佳子】
 どういうこと?
【研一】
 農地が有り余っていれば別だけど、既に豊かな農地が耕されていたとすれば、それ
以上農業労働者が増えても、耕す農地がないか、あるいはあっても痩せた土地ばかり
で、段々と生産力が低くなるということさ。
【佳子】
 耕す土地がないほど移民が押し寄せたんだ。


【中洲先生】
 さあ、実質賃金はどうなるでしょう?
【佳子】
 賃金ではなく、実質賃金?
【中洲先生】
 賃金を物価で割った、労働の実質的な価値はどうかという問いかけ。
【佳子】
 いずれにしても、そんなに労働者が増えると賃金は下がるんじゃない?
【研一】
 労働に対する需要と供給の関係から言っても、そうですよね。


【中洲先生】
 おなじみの需要と供給の関係から言えば、そのとおりだけど‥
 だけど、では、どうしてその需要曲線が右下がりになるのかな?
【佳子】
 だって、移民の労働者は有り余るほどいる訳でしょ。雇うはずないもの。
【中洲先生】
 何故?
【佳子】
 何故って言われると‥、雇っても、耕させる農地が殆どなく、期待できる収穫高が
少ないからでしょ。
【中洲先生】
 そういうことだよね。限界生産力逓減の法則。
 農地や農機具が一定量しかないとして、そのとき労働者を追加していくと、段々そ
の限界的な生産高が落ちていく。その限界的な生産力が、結局労働に対する需要曲線
になるんだよ。だから需要曲線は右下がりだということ。
【研一】
 そういうことだったのですか。
 需要曲線が右下がりで、供給曲線が右上がりだというのは当然だと思っていたので
すが‥
【佳子】
 いずれにしても、そういうことで実質賃金率は低下するということね。

次回に続く
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編集後記
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 選挙も一段落のようですが、今回のような結果になると誰が想像できたでしょう。
小泉さんはやっぱり、運が強いのでしょうか。
 郵政法案に反対した人の勢いも一遍に萎んでしまいました。こんな結果が分かって
いたら逆らうんじゃなかったと思っていることでしょうね。

 でも、先のことが分からないから面白いのだし、夢もあり、リスクもあるのですよね。

 では、次回まで






経済ニュースゼミ(第106号) 2005年9月16日
皆さん、こんにちは、Seijiです。
小泉さんが国連で演説をしています。小泉さん、英語でスピーチ
をしていますが、そう言えば、昨年の今頃も英語のスピーチをし
ていましたね。選挙で大勝した後だけに、ご機嫌なんでしょうね。

では、経済ニュースゼミを始めましょう。

<本日のメニュー>
 1.経済ニュース解説
 2.経済学基礎講座(新古典派の分配理論)
 3.編集後記
★★★★★★★★
経済ニュース解説
★★★★★★★★

■ソニーの金融事業売却
「ソニー、金融事業売却へ」とあります。(日経、9月16日)
 金融事業を統括するソニーファイナンシャルホールディングを段階的に売却する検
討に入ったようです。
 どうやら、出井流の多角化路線と決別するようです。前CEOの井出氏は、金融やイン
ターネット関連事業を育てたものの、結局当初描いた相乗効果があがらなかったこと
が原因のようです。

 ところで、このニュースを暗示するような記事が2日前に掲載されていました。「JP
モルガン ソニー銀全株を売却 投資効果見込めず」というものです。(日経夕刊、9
月14日)
 JPモルガンが売却を決定した理由は、「ソニー銀は開業以来赤字が続き、株主への
配当が見込めないことなどから、投資効果は薄いと判断したようだ」とされていま
す。

 ソニーが、金融事業売却を決定したのは、JPモルガンの動きに後押しされたもので
しょうか。いずれにしても、本業での不調で、事業の多角化を進める余裕がないとい
うのが本音なのでしょう。


■金融債の法人向け発行停止
 みずほコープレート銀行は14日、金融債の法人向け発行を来年3月で停止し、変わっ
て普通社債の発行を始める方針を固めたとあります。(日経夕刊、9月14日)

 時代の移り変わりをひしひしと感じる出来事ですね。
 戦後、銀行界は、長短の垣根が存在していました。日本興業銀行、日本長期信用銀
行、日本債券信用銀行(日本不動産銀行)の3行は、長期金融を扱う特殊な銀行として
優遇措置を与えられていました。その一つが、金融債の発行です。傾斜配分方式の
下こうした長期銀行に大量を資金を集め、それを重点的な産業に投入するシステムを
作り上げていました。

 しかし、今や、この3つの名前は消えてなくなっています。
 みずほコーポレート銀行は、興銀を前身とするものですが、そのみずほコーポレー
ト銀行が、法人向けの金融債の発行を止めるというのです。

 もっとも、銀行は、1999年から社債の発行が認められるようになっており、みずほ
コーポレート銀行も社債発行で、資金調達をする考えだとされている。
 みずほコーポレートによると、普通社債の方が表面利率や機関を自由に決めやすい
ためだとしています。

 いずれにしても、金融債が、その歴史的な使命を終えようとしている象徴的な出来
事です。

■気になる数字
 家計の金融資産の合計額は幾らでしょうか。よく、引き合いに出される数字です。
1400兆円というのが正解です。

 日銀が、15日に発表した6月末の資金循環統計によると、その正確な数字は、前年比
約10兆円増の1433兆円になったそうです。これはこれまでで最高の水準です。
 内容的には、個人向けの国債が伸びており、他方、郵便貯金が減少しているようで
す。
 1433兆円のうち、現金を含む預貯金は、約780兆円ということです。


 他方、金融機関を除く民間企業の負債残高はどの位あるかと言うと、6月末で、665
兆円だということです。ピーク時(95年度末)には、917兆円に達していたというか
ら、大変スリム化されたと言えます。


 気になる数字と言えば、東証の株取引が活発化しています。
 でも、活発化したとは言え、日経平均株価は、ピーク時(3万8915円)に比べ、まだ
1/3の水準ではないかと仰る人も多いかと思います。
 しかし、東証一部の売買代金は、1日当たり2兆円を超す水準になっており(各月ベ
ース)、これまでのピークの約2兆円(1989年2月)を超した模様です。また、東証1部
企業の時価総額も4年4ヶ月ぶりに400兆円をされたとあります。こちらの方はピーク時
の約590兆円にはまだ及びませんが、2002年をボトムに急速に回復しています。

以上


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経済学基礎講座
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【佳子】
 海外からの移民が増えて、農業労働者が増える。そうすると、農業労働者の実質賃
金が下がってしまうのね。
【中洲先生】
 じゃあ、地主さんの取り分はどうなると思う?
【研一】
 要するに資本家の取り分ということですか?
【中洲先生】
 そうだよ。


【研一】
 農業労働者の限界生産力は低下して行くのですよね。
【佳子】
 だって、耕す土地もない位移民がどーっと流入する訳だから‥
 痩せた土地しかないわけだから。
【研一】
 じゃあ、資本の生産力は?
【佳子】
 資本の生産力ってどういうこと?
【研一】
 だって、農作物というのは、農地や農具という「資本」と農業労働者の「労働」に
よって産み出されるものだから‥
【佳子】
 そういうことか。
 そういうことなら‥、だけど、農地に変化があった訳じゃないんでしょ。だから、
農地というか資本の生産力は、変わらないんじゃないの?


【中洲先生】
 労働の限界生産力というのは、資本が一定とした場合に労働を1単位追加したとき
の、生産の増加分だよ。だから‥
【佳子】
 あっそうか。
 じゃあ、資本の限界生産力は、労働を一定とした場合に資本を1単位追加したとき
の、生産の増加分ということか。
 労働が一定ね。
 だけど、移民が入ってきて、労働が増えちゃうのよね。


【中洲先生】
 10人で1枚の畑を耕していると仮定するね。
 10人で1枚というのが、一応普通の状態とする。
 その時、1枚の畑に11人、12人、13人と労働を追加していくときの生産量の増加状況
を見るのが、労働の限界生産力。
【研一】
 そもそも畑1枚が生産できる農作物の量というのは、限界があるでしょうから、労働
者を追加しても生産が増えるとも思えないですね。少しは増えるかもしれないけど‥
【佳子】
 じゃあ、労働の限界生産力は著しく逓減する訳ね。


【中洲先生】
 では、10人で1枚の土地を耕していたのを、1.1枚分にするとか、1.2枚分、1.3枚、
1.4枚と増やして行くと?
【研一】
 でも、10人で1枚の畑を耕すのがやっとな状態なのでしょ。
【佳子】
 でも、草を刈ることなど、手を抜いてもいいのだったら、結構生産は増えるのじゃ
ない?
【中洲先生】
 じゃあ、10人で、畑を2枚、3枚、4枚と増やして行くと?
【佳子】
 そうなると手抜きしても追いつかないね。
【研一】
 いずれにしても、耕す量を増やした分ほどには、生産力は上がらないですね。
【佳子】
 資本の限界生産力も逓減するということね。
 これでいいのかな、先生?


【中洲先生】
 どちらも限界生産力は逓減していくのだけど、移民が増えた状態と、それ以前の状
態を比べるとどうかということを聞きたかったのだけど。
【佳子】
 それだったら、農地の量に変化はないと考えると、資本の限界生産力は変化がない
けど、労働の限界生産力は、相当に小さくなってしまっているのかな。
【中洲先生】
 で、そのときの農業労働者と地主の取り分の関係はどうなる?
【佳子】
 地主さんは偉い人で、労働者は移民によって急増しているんでしょ。だから、労賃
は二束三文になり、地主さんの取り分が多くなるんじゃないかな。
【研一】
 でも、地主さんは何の努力もしてなくて、取り分が増えるのかな。
 それに、いくら農業労働者の限界生産力が小さくなるからと言っても、それによっ
て生産額そのものが減る分けではないから‥
【佳子】
 そう言われれば‥
 でも、農業労働者が増えた分、その人たちに支払う賃金は増える訳でしょ。
 そうなると、増える収穫高と増える賃金の比較によるのかな?


【中洲先生】
 この前言ったように、労働者を後1人雇うかどうかを決めるのは、雇うことによって
得られる収穫高と雇うために支払う賃金を比較することによるよね。資本の取り分も
同じ。後1枚畑を追加するかどうかは、追加した畑が挙げる収穫高とそのために支払う
農地のレンタル料の比較による。
【佳子】
 それ、おかしくありません?
 地主さんなのに、どうして農地のレンタル料を払うのですか?

【中洲先生】
 機会コストという概念だよ。
 地主さんは、農地を所有しているはずだから、レンタル料を払うことは現実にはな
いけど、その土地を誰かに貸したとしたら得られる筈のレンタル料を放棄していると
もみなすことができるだろう。それが機会コストだ。
 畑の限界的な収穫高がその機会コストを上回れば、その畑を追加して利潤を挙げる
ことができるという訳だ。

【佳子】
 限界的な収穫高というのは、限界生産力のことですよね。
 だとすると、労働の限界生産力は著しく落ちるから労賃も相当落ち込むということよね。
【研一】
 それは、別に地主さんがケチだからそうなるというわけでもないのか。
【佳子】
 資本の限界生産力、これはどうかな。変わらないのかな。
 でも変ね。労働者が増えた分、1枚当たりの農地の生産量は増えるはずね。
【中洲先生】
 そういうことになるよね。
 移民が流入する前と比べて、農業労働者1人の限界生産力は、農地の量が変わらない
ので減少する。一方、畑1枚の限界生産力は、農業労働者が増えているので増大する。
もっともだからと言って、その増大した労働者数を一定とすれば、限界生産力は逓減
するのだけど。
 農地の限界生産力は増加するので、資本、農地一枚の取り分は増え、地主さんの取
り分は増大するということだ。
 生産された農作物は、労働と資本、それぞれの限界生産力に応じて分配される。
 このそれぞれの限界生産力に応じて分配されるというのが、新古典派の所得分配理
論だよ。
【佳子】
 新古典派ね。

 次回へ続く
======
編集後記
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 明日から3連休の人もいますよね。
 19日は敬老の日ですね。お年寄りは大切にしましょう。
 このマガジン、お年寄りや年配の人も読んでいるのでしょうか。


 では、次回まで






経済ニュースゼミ(第107号) 2005年9月21日
皆さん、こんにちは、Seijiです。
9月も下旬というのに暑いですね。アメリカではまたハリケーンが来そうだということ
で、避難命令が出ているみたいです。大変なことです。

では、経済ニュースゼミを始めましょう。

<本日のメニュー>
 1.経済ニュース解説
 2.公認会計士にもっとインセンティブを
 3.編集後記
★★★★★★★★
経済ニュース解説
★★★★★★★★

■基準地価が反転
 国土交通省は、20日基準地価を発表しました。東京23区では、住宅地0.5%、商業地
0.6%と、ともに前年水準を上回り、15年ぶりの上昇となったとあります。但し、全国
平均では、住宅地マイナス3.8%、商業地マイナス5.0%となっているとのことですの
で、全国規模で地価が反転し始めたとは言えません。

 しかし、東京23区で地価が反転し始めたことによって、ようやく、「資産デフレ」
の時代が終わろうとしているようにも思われます。日経によれば、「不動産の資産額
で全国の約4割を占める首都圏の地価底打ちが見え始めたことで、資産デフレ脱却に向
けた動きも鮮明になってきた」とあります。

 東京を始めとする大都市圏で地価の底入れ感が広がっている背景として、「堅調な
オフィス需要や不動産市場への投資マネーの流入などが地価上昇をけん引している」
とされており、具体的な事実として次のようなことが指摘できるようです。

<ファクト>
・小泉内閣が4年前に土地政策を転換(都市での再開発促進)。容積率の規制緩和が、
 高層ビル建設ラッシュを招いた。
・不動産投資信託(REIT)など不動産の証券化が進み、投資資金が流入した。REITの
 時価総額は2兆5千億円。

 今後、地価反転の動きは地方まで波及するかというのが、次の関心事になろうかと
思われます。
 しかし、東京都心部であっても、利便性が劣れば地価は下落しているし、また、都
心回帰の反動で、遠距離通勤圏では、なお地価が下落しているということもあるとい
うことです。日経社説によれば、「大都市圏と地方圏に分ければ、地方圏は一部を除
けば下げ止まりにはなお遠い。二極化・個別化といわれる現象に変わりはない」とい
うことです。

 ただ、東京23区だけとは言え地価が反転し始めたことで、投資家の心理に明るさが
戻るような気がします。なにせ首都圏の土地の資産額は、全国の4割も占めるのですか
ら。

 なお、株価の方も20日、4年3ヶ月ぶりに13000円台を回復しています。

 以上
★★★★★★★★★★★★★★★
公認会計士にインセンティブを
★★★★★★★★★★★★★★★

 カネボウの粉飾決算事件で、担当した公認会計士が逮捕され、日経が「自覚乏しき
決算の番人 ルール厳格化に追いつけず」(日経、9月19日)などと報道した他、朝日
には「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」で売れっ子の山田真哉氏が「私の視点」に
「会計士のチェック機能を厳格に」と題する主張を載せている。

 山田氏は、「信頼回復の手だては、監査の公平性、独立性をこれまで以上に高める
ように改善し、それを国民の前に形として分かりやすく示すことだろう」としてい
る。具体的には、公認会計士協会の自主規制が形式的なものの終わらないように、監
査の質をチェックする要因を十分に確保することと「公認会計士・監査審査会」に強
い権限を与えることも検討していく必要があろうとしている。

 しかし、山田氏の意見に従い、協会の規制を強化するなどしても、抜本的な解決に
はつながらないのではないかと思う。

 日経は、「監査は報酬を受け取る相手に、緊張感を持って対峙する責務がある。た
だ厳しく意見して顧客を失えば自分たちの収入が減るという現実の板ばさみについて
『監査を厳しくすれば会社が倒れかねない場合、一時的に微妙な会計処理を認めたく
もなる』と漏らすベテランもいる」と紹介している。

 公認会計士の監査は、制度的には投資家の利益のためにある。
 投資家一人ひとりは、企業の実態を直接確かめることができず、投資判断情報が限
られている。しかし、公認会計士の客観的な監査を信頼することによって、適切な投
資判断が可能になるというシステムだ。

 しかし、現実には、公認会計士の監査は、企業の決算にお墨付きを与えることによ
って、当該企業の信頼性を増すためになされてきたという性格の方が強い。
 だからこそ、監査料を支払うのは、監査を受ける企業なのだ。

 投資家保護を訴え、また、投資家のために監査があるというのであれば、何故、投
資家は、公認会計士に対価を払わないのであろうか。

 問題の本質はそこにある。そして、我が国においても、米国においても有識者はそ
のことに気が付いている。
 投資家が、監査料を全部にしろ、一部にしろ支払ってくれれば、公認会計士は、黙
っていてももっと投資家サイドに立った監査を行なうようになるはずである。

 しかし、今まで無料だったものが有料になる政策は不人気だ。また、投資家が監査
料の一部を負担するにしても、どのような経路で、投資家が支払った手数料を会計士
側に渡すのか。仕組みを構築するのは実際問題が多い。さらに、企業側には、監査が
厳しくなるくらいだったら、今までどおり自分たちだけで監査料を負担した方が得だ
という計算が働いている。
 こうした理由から、報酬の問題には入り込まない方がよいと判断されてきたのであ
る。

 しかし、真に監査不審を払拭したいというのであれば、報酬の問題を避けては通れ
ないであろう。

 投資家が監査料の一部を負担する仕組みとしては、証券取引所が株取引に一定の割
合で手数料を課し、その手数料を一旦プールした上で、監査の実績(量)に応じて、
証券取引所から監査法人(公認会計士)へ支払うなどの方法が考えられる。

 こうした取り組みを、米国より先駆けて行なうことができるようになったとき、日
本は初めてアメリカに胸を張ることができ、アメリカも、日本を少しは尊敬するよう
になるかもしれない。
 
以上
=====
編集後記
=====

 今回は、経済学基礎講座はお休みです。済みません。

 暑さ寒さも彼岸までと言いますが、今年は暑いですね。

 話は跳びますが、
 安達祐実ちゃんが、ご結婚とか。しかも、出来ちゃった結婚。
 ちょっと古い言い方ですが、どちらもソース顔風で似合っているのかも知れませ
ん。

 ところで、出来ちゃった結婚、英語でなんというかというと、
 Shotgun Wedding
ということのようです。

 どうしてそういう言い方なのか?
 かつて、娘を妊娠させた男に憤慨したお父さんが、銃を突きつけて結婚を迫ったと
いうのが由来のようです。

 では、また次回まで






経済ニュースゼミ(第108号) 2005年9月26日


皆さん、こんにちは、Seijiです。
やっと涼しくなってきましたが、皆さんお元気ですよね。

では、経済ニュースゼミを始めましょう。

<本日のメニュー>
 1.経済ニュース解説
 2.経済学基礎講座(新古典派の分配理論)
 3.編集後記


★★★★★★★★
経済ニュース解説
★★★★★★★★

■G7会議と人民元
 あっという間にお彼岸が済みましたが、9月23日夕刻、ワシントンで開かれていたG7
会合が閉幕しました。20年前の9月22日には、プラザホテルでG5が集い、所謂プラザ合
意が結ばれましたが‥

 さて、今回のG7では何が議論されたのでしょう。20年前のプラザ合意では、ドル高是
正が合意され、その後急激な円高を招きました。今回は、中国の人民元が優先課題に
なるかと思っていましが、アメリカは、ハリケーン「カトリーナ」に続き「リタ」の
襲来で、G7どころではなかったかもしれません。

 ところで、米国からの圧力を感じている当の中国ですが、G7に先制攻撃をかけました。
 中国は、23日、円やユーロなどドル以外の通貨と人民元の変動幅を現行の上下1.5%
から同3%に広げると発表したのです。(「人民元 変動幅 ドル以外に拡大」日経、
9月24日)

 ただこの措置、大したものとは言えないと思います。何故なら、そもそもその中国
当局は、現在も為替市場に積極的に介入して、実質的には固定相場を採用し続けてい
ると言った方が相応しいような状況が続いているからです。
 また、技術的な意味でも問題があるように思えます。それは、今回の措置で円やユ
ーロなどは、1日の変動幅が1.5%から3.0%まで引上げられることになりましたが、ド
ルの変動幅は、1日当たり0.3%に据え置かれたままであるからです。本来であれば、
ドルもそれ以外の通貨も同じような変動幅でないと筋がとおりません。我が国財務省
もその点について、中国に注意喚起しているようです。(「対ドルとの格差 中国に
是正要請」日経、9月26日)

 いずれにしても、中国側に先手を打たれた格好の米国は、「技術的な一歩ではある
が、正しい方向に進んでいる。改革継続を期待する」と語ったにとどまっています。

 結局、G7では、「中国当局の為替制度のさらなる柔軟化を追求した決断を歓迎。よ
り市場を志向した制度をさらに進めることを期待」という共同声明を採択していま
す。(日経夕刊、9月24日)

 一応、中国側の作戦が功を奏したかのような格好ですが、米国の官僚やエコノミス
トのなかには、為替問題だけでは米国の経常収支問題を解決することにはつながらな
いと考える者も存在し、結局、米国の政府当局の対応は、理屈と政治的な配慮のバラ
ンスの上に成り立っているのでしょうか。



■FRB議長
 米国は、20日にFRBがフェデラルファンドレートを0.25%引き上げ、3.75%にするこ
とを決定しました。昨年6月から11回連続の金利引き上げです。1回当たりの引き上げ
幅は、毎回0.25%であり、累積で2.75%の引き上げになっています。
 ただ、毎回の引き上げ幅が一定だということもあり、今回の引上げも予想の範囲内
のものという見方ができますが、一方でハリケーン被害の経済に与える影響があり、
今回は金利引き上げを見送るべきではないかとの意見が出ていました。実際、全米12
の地区連銀のうち5つが引上げの発議を見送った他、委員会の採択でも1人の委員が引
上げに反対したとあります。

 そのFRBの決定に対し、共和党の上院議員が公然と批判を行なっているようです。バ
ニング議員が「ばかげている。グリーンスパン議長は無神経だ」と述べ、金融引き締
めの停止を求めたとあります。(日経、9月23日)
 また、その議員は、「議長が公用車や運転手を持たず自分でガソリン代を払ってい
たら、もう少し被災者に同情的だったろう」と述べたともあります。

 皆さんは、FRBの金利引上げ決定についてどのように思いますか。
 ハリケーンの影響で景気に対し悪影響があるから、金利を上げるようなことはおか
しいと思いますか。それとも、ガソリン価格の上昇や、物価全般にわたって値上げの
動きが見られるので、金融を引き締めた方がいいと思いますか。

 恐らくいずれの考えも一理あるのだと思いますが、前述のバニング議員の批判はあ
まり論理的整合性がとれていないような気がします。
 というのは、FRBは、インフレを懸念して引き締めを行なっからです。簡単に言え
ば、ガソリン価格が上がらないようにとの思いです。ですから、「議長が自分でガソ
リン代を払っていたら」という論調は頂けません。
 FRBを批判するのであれば、「災害復興のために資金を必要としている人々の借入負
担を一層重くするものではないか」と言うべきだったと思います。

 ただ、ご存知のとおり、アメリカの長期金利は、短期金利の累計2.75%もの引き上
げにもかかわらず、殆ど上がっていないということです。グリーンスパン議長は、こ
の現象を「謎」と呼んでいますが、そのことも、短期金利の引き上げを停止させなか
った理由なのではないでしょうか。



■量的緩和政策
 ところで、同じ中央銀行といっても、こちらは日本の中央銀行。ゼロ金利どころ
か、市場に資金をジャブジャブ供給する量的緩和政策を継続しています。
 ただ、相変わらず量的緩和政策を継続しているとはいうものの、少し雰囲気に変化
があるようです。「量的緩和解除 日銀地ならし」とあります。(日経、9月24日)

 日銀の政策委員が相次いで量的金融緩和政策の解除を見据えた「出口論」に言及し
始めています。8月末に行なった講演で岩田副総裁が出口論の口火を切ったとあります
が、その一方で、福井総裁は、24日、「物価がプラスの世界に入ったからといって
即、金融政策の枠組みを変える想定にはなっていない」と慎重な姿勢を崩していない
ようです。

 ただ、本音としてはどうなのでしょうか。本当に量的緩和政策が必要だと考えてい
る人がどれほどいるのでしょうか。
 速水総裁のときの2000年8月、ゼロ金利政策を解除しましたが、その解除に関する苦
い思い出がトラウマになっていて、率直な発言ができないでいるのではないでしょう
か。
 
 ゼロ金利というのは、ある意味で中央銀行の務めを放棄するにも等しかったので、
日銀としてはゼロ金利政策を早期に停止することを望んでいたようですが、それが裏
目に出て、特に政界からの強烈なバッシングを浴びました。その結果、ゼロ金利をさ
らに踏み越えた量的緩和政策が考案されたのです。

 しかし、「量的緩和政策」は、通常であれば、引き締めの指標として使われる「日
銀当座預金」(銀行準備)が、緩和度を図る尺度として使用されているために大きな
混乱を生じさせているのです。

 分かりやすく説明すると次のようになります。
 マネーサプライは、現金と要求払い預金の合計です。そして、マネタリーベース
は、現金と銀行準備(日銀当座預金)の合計です。その結果、マネーサプライとマネ
タリーベースの関係は、マネタリーベースに貨幣乗数を掛け合わせたものがマネーサ
プライになります。
 その貨幣乗数ですが、分母が(「現金・預金比率」+「準備・預金比率」)であ
り、分子が(「現金・預金比率」+1)ということになっています。

 ちょっと分かりにくいでしょうが、準備・預金比率が低いほど貨幣乗数は大きくな
り、マネーサプライを増加させ、また、現金・預金比率が低いほど、これも貨幣乗数
を高め、マネーサプライを増加させるのです。

 日銀が、量的緩和政策採用以来行なってきたことは、日銀当座預金残高、即ち銀行
準備の増大でした。これはベースマネーの増大を意味します。しかし、その一方で、
銀行の預金は増えず、銀行準備だけが増えたので、貨幣乗数は小さくなってしまいま
す。その結果、日銀当座預金残高を増大したほどには、マネーサプライは伸びないの
です。また、幾ら日銀当座預金残高の水準が高くても、2004年1月からは、前年比で伸
びが止まっているので、その意味でもマネーサプライの増加につながりません。

 マネーサプライを増大させ、デフレを食い止めようとするのならば、日銀当座預金
残高(銀行準備)を増やす方式ではなく、現金を増やす方式を素直に採用するのがオ
ーソドックスな方法だったのです。
 しかし、実際にはそういう素直な方式を採用せず、金融政策を複雑怪奇なものにし
てしまったということです。

 それに、市場に資金をジャブジャブ放出するというと、実際の経済の現場に資金が
流入してくるかの錯覚を起こさせますが、金融関係者がいう「市場」とは、銀行間で
短期資金を融通をし合うコール市場を意味しているに過ぎません。

 以上のようなことをよく考えた上で、「量的緩和政策」について考え直してみるこ
とが有益なことだと思います。





以上 


========
経済学基礎講座
========

【佳子】
 結局、農作物は、農民と地主さんの間で、その限界生産力に応じて分配するわけで
すか?
【中洲先生】
 理解が速いね。
【佳子】
 全然速くないんですけど。
 研一君は理解できた?
【研一】
 なんとなくね。
【佳子】
 限界生産力に応じて分配するというのがちょっと‥
 具体的にはどういうことなのかな。
【中洲先生】
 労働の限界生産力がMPL、資本の限界生産力がMPK。そして、労働の投入量をLとし、
資本の投入量をKとする。そうすると、労働者側への分配は、MPL×Lになり、資本、つ
まり地主への分配率は、MPK×Kとなるわけだよ。


【佳子】
 何で、限界生産力とそれぞれの投入量を掛け合わせるのかな。
【研一】
 どういうこと?
【佳子】
 労働の生産力とその生産コストを比べる訳よね。そして、限界生産が限界コストと
等しくなるところで、生産をストップするのよね。それ以上生産すると、コストの方
が多くかかるようになり、利益が減ってしまうから。
 だけど、どうして労働の取り分がMPL×Lになり、資本の取り分がMPK×Kになるのか
な。
 MPLは、生産をストップさせる地点での限界生産力でしょ。そうすると労働者全体で
は、もっと生産しているんじゃないのかな。だから、一番水準の低いMPLに労働の投入
量全体を掛け合わせるのは理屈に合わない気がするのだけど‥。
【研一】
 だったら、資本の方もそういうことだよね。


【中洲先生】
 いいところに気が付いたね。
 この新古典派の所得分配理論というのは前提条件があるんだよ。
【研一】
 そうなんですか。
【佳子】
 だったら早く教えてください。
【中洲先生】
 規模に関して収穫一定、利潤最大化、競争の条件が満たされているということだ。
【研一】
 何か難しくなりましたね。
【中洲先生】
 簡単に言うと、この問題になっている地域では、農業の経営者は、利潤最大化を目
指しており、また、市場が完全に競争状態にあって、新規の参入や退出が自由だとい
うことだ。
 要するに、農業経営が儲かると思えば、自由に農業経営に参加する環境にあるとい
うこと。
【研一】
 少しでも農業が儲かると新規参入があるということになると、最終的には儲けがゼ
ロの状態になっているということですか?
【中洲先生】
 仮に平均生産高(収入)が平均コストより高ければ、その差と労働量を掛け合わせた
ものが利潤になるよね。
 そして、そうした利潤が見込める限り新規の参入が続く。
【研一】
 で、最終的には、利潤がゼロの状態で新規参入が止まるのですよね。


【中洲先生】
 もう分かってきたかな?
【佳子】
 全然。
【中洲先生】
 経営者は利益の最大化を目指す。そのときの条件は?
【佳子】
 それは限界生産力が限界費用と等しくなる地点で生産を行なう。
【中洲先生】
 では、利潤がゼロになるときの条件は?
【研一】
 平均収入と平均コストが等しくなる地点で生産を行なうことですか?
【中洲先生】
 経営者が、最大の利潤を目指しながらも、利潤がゼロになる水準がある。それは、
限界生産力、即ち限界収入と平均収入が等しくなっている地点だ。
 だから、労働者側への分配がMPL×Lと言い、資本への分配がMPK×Kというのは、完
全競争の状態で経営者が利潤の最大化を目指す限り、労働者には、労働の平均生産力
×L、資本には、資本の平均生産力×Kが分配されると言うことと同じことなんだ。
【佳子】
 なーんだ。そういうことだったのですか。


次回に続く


======
編集後記
======
 米国では、ハリケーンの度重なる襲来で、地球温暖化との関係が漸く取りざたされ
ているとのことです。
 少しは真面目に考えてもらいたいものです。
 ペルーで地震があったとか。
 自然災害が酷くなるばかりですね。

 ところで、小泉今日子さまのビヨヨーンというCM見ました?
 グーですね。

 では、また






経済ニュースゼミ(第109号) 2005年9月28日
皆さん、こんにちは、Seijiです。
株価が随分上げているようですね。皆さんは株には興味がありますか。
家計調査によると4千万円以上の金融資産がある家計では、平均して7百万円相当の
株・株式投信を保有しているそうです。

では、経済ニュースゼミを始めましょう。

<本日のメニュー>
 1.経済ニュース解説
 2.経済学基礎講座(限界生産逓減)
 3.編集後記
★★★★★★★★
経済ニュース解説
★★★★★★★★

■ハリケーンの米経済への影響と金利
 前回、ハリケーンの影響を危惧する上院議員が、金利引き上げを決定したFRBを非難
したことについてお伝えしましたが、グリーンスパン議長が、ハリケーン被害につい
てコメントしています。(「ハリケーン 米経済への影響一時的 FRB議長 利上げ続
行を示唆」日経、9月27日夕刊)

 グリーンスパン議長は「人的被害の大きさに比べれば、経済的な打撃は部分的なも
のに過ぎない」と述べ、利上げの続行が示唆されたようです。

 米国の金利引上げは、0.25%ずつの小刻みな利上げだとはいえ、昨年6月以来これま
での合計11回で2.75%の引上げになっています。

 対照的に我が国は、フェデラルファンドレートに相当するコールレートがほぼゼロ
の状況が続いていますので、日米の金利差は、この1年数ヶ月で驚くほど拡大したこと
になります。日米間で、これだけ金利差が拡大すると、ドル高圧力が自然と強くなる
というのが、経済学の教えです。お陰でというか、日本は1年半程度、為替の介入を行
なっていません。

 米国は何でそんなに金利を上げるのかと思われる人も多いかと思いますが、実は、
FRBは、これまでの金利引き上げを「金融引き締め」とは考えていないのです。米シカ
ゴ連銀総裁が「物価の上昇率は安全圏の上限にあり、超低金利政策をさらに修正する
必要がある」と述べているように、これまでの金利引き上げは、あくまでも「超低金
利政策の修正」と位置づけられているのです。



以上
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経済学基礎講座
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【中洲先生】
 限界生産逓減というのはどういうことだ?
【佳子】
 先生、本気で聞いているの?
【研一】
 限界生産逓減の法則というのは、先生が教えてくれたんですよ。
【中洲先生】
 だから、理解度テスト。
【研一】
 労働の限界生産力は、資本を一定の量とすれば、労働を一単位ずつ追加していった
場合、限界的な生産力が段々落ちていくということでしょ。
【中洲先生】
 佳子ちゃんは?
【佳子】
 研一君の言うとおりでしょ。


【中洲先生】
 これまで、移民が大量に流入してきた場合を想定したよね。
 移民の人たちは、体力も働きぶりも内地の労働者と変わりないんだよ。むしろ体力
はあるかもしれない。
【佳子】
 でも、農地が限られているところに大量に移民が流入してくると、幾ら体力がある
人たちでも、耕すところが限られていて、能力の発揮ができないからでしょ。
【中洲先生】
 ひっかかるかと思ったけど、よく理解しているね。


【研一】
 先生、ちょっと待って下さい。
【中洲先生】
 いくらでも待ちますよ。
【研一】
 そうすると、労働の限界生産が逓減するというのは、労働者の質がどうこうという
ことではなく、単に農地、つまり資本が限られているからそうなるのですか?
 ということは、資本の限界生産が逓減するのは、労働者の数が限られているから?
 じゃあ、労働者が急に少なくなったら、資本の限界生産力がアップする訳ですか?
【中洲先生】
 そうなんだよ。移民の流入で労働者数が増えたら、労働の限界生産力が落ち、資本
の限界生産力は上がる。労働者が減ったら、労働の限界生産力が上がり、資本の限界
生産力が落ちる。


【佳子】
 単に労働者が減っただけの理由で労働の限界生産力が向上しましたなんて、一般の
人に言っても理解できないよね。
【中洲先生】
 そうだろうね。理解不能だろうね。
【研一】
 結局、限界生産力は、労働と資本のそれぞれの量の比率の問題ということですか?
【中洲先生】
 そういうことだよ。


【佳子】
 農作物を、どうやって農業労働者と地主さんで分配するかという話に戻るんですけ
ど‥
【中洲先生】
 どうぞ。
【佳子】
 先生から習ったところによると、労働と資本の限界生産力に応じて分配されるとい
うことでしたよね。
【中洲先生】
 マスターしたね。
【佳子】
 でも、結局、限界生産力は、労働と資本の存在量の割合に応じるということです
か?
 なんとなく釈然としないな‥
【研一】
 どういうこと?
【佳子】
 だって、立派な作物が取れるのは大地が豊かであることが理由でしょ。だから、本
来、その耕す農地が豊かであれば、その農地の所有者の地主は多くの分け前を受け取
り、逆に痩せた土地だったら、分け前が少ないというだけのことじゃないのかな。
【中洲先生】
 佳子ちゃんの言いたいことも分かるんだけど‥


【研一】
 でも、佳子ちゃんが想定しているのは、労働者がいくらでもいるような状態を暗黙
のうちに想定しているからじゃないのかな?
【佳子】
 暗黙のうちに想定?
【研一】
 労働者が沢山いる、あるいは、一定数いるとして、そこで豊かな農地と痩せた農地
を比較したら、それは豊かな農地の方が生産力はある。だけど‥
【佳子】
 だけどって?
【研一】
 どんなに豊かな土地があろうと、耕す人が限られていたら?
 例えば、コロンブスが発見する前のアメリカ大陸なんかを想定したら?
【佳子】
 そうしたら、折角の豊かな大地も生産には利用されていないのね。
【研一】
 そういう状態に移民が流入してくると、その人たちの限界生産力は、相当に大き
い。なにせ農民1人に対し、耕せないほどの大地があるからね。


【中洲先生】
 森に行けば、果物や木の実がなっているので、人間は、本能的に大地の方が産出に
大きな影響力をもっていると考えたがるのだろうけどね。
 でも、結局、資本の量と労働の量の比率の問題に還元するんだね。
【佳子】
 そういうことなのか。
【研一】
 実際の価値をどう見るかという問題と、希少かどうかと問題を分けて考えるべきな
のか。
【中洲先生】
 どんなに価値があろうと高い価格がつくとは限らないからね。
 水や空気がそうだよね。
【研一】
 水や空気は、人間の生存にとって必要不可欠ですね。
【佳子】
 でも空気は無料か。やっぱし豊富にあるからかな?


次回に続く
=====
編集後記
=====

 9月も下旬になるとテレビ番組の改編時期になります。昨日、踊るさんま御殿 夢の
競演 3時間スペシャルというのがありました。
 見ました?
 そこで、島田紳助さんとさんまさんのしゃべくりがありましたが、見ごたえがあり
ました。いつもは場を仕切ってしまう紳助ですが、さんまにちょっと押されていまし
た。

 では、また次回まで






経済ニュースゼミ(第110号) 2005年9月30日
皆さん、こんにちは、Seijiです。
阪神が優勝し、大阪は大騒ぎのようです。日銀の福井総裁は阪神ファンとして有名で
すが、ちょうど大阪に出張中で大喜びしているみたいです。

では、経済ニュースゼミを始めましょう。

<本日のメニュー>
 1.経済ニュース解説
 2.経済学基礎講座(対外純投資)
 3.編集後記
★★★★★★★★
経済ニュース解説
★★★★★★★★

■米、対中繊維協議物別れ
 米中間の繊維摩擦解消を目指す、実務レベルの協議が28日夜に物別れに終わったと
報道されています。(「米、対中繊維協議物別れ セーフガード追加発動へ」日経、9
月30日)
 この会議は、中国産繊維の対米輸出が急増したことを受け、今年の6月から断続的に
開かれているものです。米国が対米輸出を前年比7.5%程度の伸びに抑えて欲しいと求
めているのに対し、中国側は、20−30%の伸びを容認してもらいたいと要求している
らしいのですが。

 協議が物別れに終わったことによって、セーフガード(緊急輸入制限)の追加発動
に踏み切る公算が大きくなったとされていますが、中国の対米輸出の伸びを7.5%程度
に抑えたいとする米国側の要求内容自体は、それほど理不尽だとも思えません。

 ただいずれにしても、輸入制限が行なわれることになれば、社会全体にとっての経
済的厚生の損失という死荷重が発生することになります(と経済学の教科書には書い
てあります)。従って、輸入制限を行うべきではない、というのが標準的な経済学の
教科書の教えるところなのですが、米国のエコノミストは、自国のこうした動きに対
してどんな意見を持っているのでしょうか。

 ところで、中国のお陰でというか、日本バッシングはもうなくなったのかと思って
いたら、米国で対日批判が強まっているとあります。(「米議会、対日批判強める」
日経、9月29日夕刊)

 28日に米下院歳入委員会が対日経済問題に関し公聴会を開いていますが、日本によ
る米国産牛肉の輸入再開の遅れや簡保優遇、或いは為替介入などに対し厳しい批判が
出たとされています。

 対日経済問題で公聴会を開くのは実に7年ぶりということです。
 ただ、為替介入の問題なども取り上げていますが、介入は昨年春までの話ですし、
結局、米国産の牛肉輸入再開を早く実現させたいだけの話のようです。


以上
=============
経済学基礎講座(対外純投資)
==============

【研一】
 アメリカの経常赤字はいつか解消するのかな?
【中洲先生】
 佳子ちゃんはどう思う?
【佳子】
 難しいわね。だけど、赤字が減少する気配はないんでしょ。
 アメリカは何をやっているのかな?
【研一】
 かつては、アメリカにとって日本が最大の貿易赤字国だったから日本への風当たり
が強かったけど、最近では、中国が最大の貿易赤字国になっているから、中国からの
輸入を抑えようとしているんじゃないかな。
 中国からの繊維製品に輸入割り当てを課したり、また、中国の人民元の切り上げを
求めたりしているよね。
【佳子】
 でも、そういうのは効果あるのかな?
【研一】
 だって、人民元が不当に低く評価されているために中国企業が競争力を持っている
と考えれば、人民元を切り上げると、当然競争力は弱くなると思うけど‥
【佳子】
 だけど、日本とアメリカの関係のように、円が強くなっても、アメリカの貿易赤字
は減らなかったから‥


【中洲先生】
 為替政策以外では、どんな手段があると思う?
【佳子】
 関税をかけたり、輸入割り当てをしたりですか?
【中洲先生】
 そういうのもあるかも知れないけど‥
【佳子】
 そういえば思い出しましたけど、政府の赤字を減らすようすべきだというのもあっ
たような気がしますけど‥
【研一】
 経常赤字を減らす手段だよ‥、財政赤字がどのように関係しているのかな?
【佳子】
 私もよくわかんないけど、財政赤字を減らすことが必要だと言われているみたいだ
けど。
【中洲先生】
 そうだね。財政赤字を減らすことが肝心だとよく言われる。
【研一】
 だけど、財政赤字が貿易赤字とどのように関係しているのかな。


【中洲先生】
 じゃあ、基礎から考えてみようか。
 国民所得の恒等式は?
【研一】
 国内産出額をY、消費をC、投資をI、政府支出をG、純輸出をNXとすると‥
【佳子】
 純輸出って?
【研一】
 輸出から輸入を差し引いた額。輸出の方が多ければ、純輸出はプラスになり、輸入
の方が多ければ、純輸入はマイナスということに‥
【佳子】
 そういうことか。


【研一】
 で、Y=C+I+G+NXという関係が成り立っています。
 国内で生産されたもの、即ちYは、消費されるか、投資に回されるか、政府が消費す
るか、或いは輸出に回されるということです。
【佳子】
 輸入の方が輸出より大きかったら?
【研一】
 輸入の方が輸出より大きいということは、NXがマイナスということ。その分は、消
費と投資と政府支出の合計額よりも国内の生産額が少ないということになるというこ
とさ。
【中洲先生】
 大雑把に言うと、生産が増えずに消費が増えるためには、輸入したものを消費する
割合が大きくなるということだし、逆に、生産が増えても消費が増えない場合には、
輸出が増えているということになるからね。
【佳子】
 そういうことか。


【研一】
 じゃあ、よく経済成長率が大きくなるためには、最大の支出項目である消費が大き
くなることが必要だと言われますけど、それは必ずしも正しくなくのですか?
【中洲先生】
 だから、消費の伸びが国内の生産増加につながる場合には、そのように言えるのだ
ろうけど、輸入品に対する消費が伸びるだけだったら、国内の生産が増えることには
ならないからね。

 それはそうと、研一君が紹介してくれた、その恒等式を少しいじくってみると‥
 Y−C−G=I+NX
となるよね。
 国内の生産から消費と政府支出を差し引いたものは何になる?
【研一】
 それは、残ったものですから貯蓄ということですか?
【中洲先生】
 そうだよね。貯蓄はS。
 となると、S=I+NXということになる。
【佳子】
 輸出と輸入が均衡しているとすれば、貯蓄と投資が同じ大きさになるんですよね。
【中洲先生】
 そういうこと。
 ところで、Iを左辺へ移項すると?
【佳子】
 S−I=NX
 どういうことかな?
【研一】
 貯蓄が投資を上回った額が