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日銀当座預金編(最近の金融政策について)

ナンバー 主要項目
経済ニュースゼミ(第1号、2004,11,18) 日銀当座預金、デフレ、金融政策、量的緩和措置
経済ニュースゼミ(第2号、2004,11,20) インフレターゲット論、マネタリスト (GDP見直し、デフレーター)
経済ニュースゼミ(第3号、2004,11,24) ベースマネー、準備預金制度、貨幣乗数
経済ニュースゼミ(第4号、2004,11,26) 買いオペ、預金準備率、コール市場、0.001%刻み、無担保コール
経済ニュースゼミ(第5号、2004,11,29) ポートフォリオ・リバランス効果、期待効果
経済ニュースゼミ(第6号、2004,12,1) ポートフォリオ・リバランス効果
経済ニュースゼミ(第7号、2004,12,3) 銀行保有株式買上げ、ゼロ金利政策
経済ニュースゼミ(第8号、2004,12,6) 日銀当座預金の機能
経済ニュースゼミ(第9号、2004,12,8) 量的緩和政策への転換、資金をジャブジャブ投入、コール市場
経済ニュースゼミ(第10号、2004,12,10) ゼロ金利政策解除、ダム論
経済ニュースゼミ(第11号、2004,12,13) 量的緩和政策の解除条件
経済ニュースゼミ(第12号、2004,12,15) 札割れ、貨幣的現象
経済ニュースゼミ(第13号、2004,12,17) インフレターゲット、リザーブターゲット、アコード

経済ニュースゼミ(第1号、2004,11,18)
 皆さんこんにちは コラムニストのSeijiです。

 このマガジンは、難しい経済や金融のニュースを易しく理解できるようするするためのものです。中洲先生、佳子さん、研一君が登場し、思い思いの意見を述べ話が展開していきます。皆さんはこの3人の話を聞くことで、自然と経済に関する理解が深まって行きます。

 3人が何気なく話をするような形で進行しますが、内容的には相当高度なものも含まれます。ですから、皆さんも気長にお付き合い頂けたらと思います。それでも分からないことや疑問があれば、メールで質問して下さい。

 では、さっそく始めましょう。最初は、日銀当座預金についてという超難解なテーマから始めます。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
日銀当座預金について
★★★★★★★★★★



<佳子>
 日経新聞読んでいたんですけど、日銀当座預金というのが景気回復と関係あるんですか。
<中洲先生>
 いきなり難しい質問だね。一言で説明するのは大変なんだけど、逆に質問しちゃうか。
 研一君どう思う。
<研一>
 最近少し景気が回復しているようですが、でも物価は基本的には下がり続けています。デフレなんですね。で、物価が下がり続けるということは、買いたいものがあっても、先延ばしした方が得なんですよ。だって、値段が下がるわけですから。


<佳子>
 でも、欲しいときに手に入れないと意味ないよ。水着だって、秋になってから買っても意味ないし、それにパソコンだって、値段はどんどん下がるでしょうが、買わないでいたら、何もできないよ。
<研一>
 まあ、それはそうだけど、一般的な話としてだよ。皆が買い控えると、益々景気が悪くなってしまう。そうでしょう。
<佳子>
 それはわかるよ。
<研一>
 で、景気が悪くなると、景気を刺激する政策が必要になる。バブル経済崩壊以来、政府はいろんな景気対策を講じてきた。始めは、財政政策が主役だった。公共事業をどんどんやった。
<佳子>
 そのおかげで、政府の借金は増え続けた。何百兆円とあるんでしょ。あれ、返せるのかな。


<研一>
 その問題はちょっと置いとくけど、借金が増え続け、公共事業もこれ以上は増やせなくなった。特に小泉さんが首相になってからは、公共事業を削っている。そうなると、景気政策の主役は、金融政策にならざるを得ない。ということで、金利を下げ続けた。
<佳子>
 預金金利は、殆どないに等しい状態だよね。
<研一>
 そうだよね、そこまで金利は低くなった。これ以上下げられない。だって、これ以上下げるとマイナス金利だ。でも、常識として、そんな政策はとれない。


<佳子>
 そうすると、景気回復の手段がないということ。
<研一>
 そうじゃない。日銀は、それまでの金利政策から、資金を市場にジャブジャブ放出する政策に転換した。量的緩和措置という。


<中洲先生>
 よく勉強しているね、研一君。
<佳子>
 で、日銀当座預金との関係は、どうなの。
<研一>
 いきなりの質問だね。
<佳子>
 いきなりじゃないわよ、最初からそれを聞いているのよ。
<中洲先生>
 そうだった。


<研一>
 いやー、だから量的緩和措置ということで、日銀当座預金残高の目標値を設定したんだ。最初は、5兆円だったけ。
<中洲先生>
 そうそう、平成13年から目標値を設けた。
<研一>
 それが、今年に入ってからは、30兆円から35兆円の範囲ということだ。ね、大盤振る舞いでしょ。


<佳子>
 で、その日銀当座預金というのは誰のお金なの。
<研一>
 えーっ、誰のって考えたことなかったけど、市場に放出する資金だから、日銀のお金だよ。
<中洲先生>
 ブーです。不正解。
<佳子>
 すると市中の銀行の預金ですか。
<中洲先生>
 銀行に限りませんが、大部分は銀行それに証券会社等が日銀に預けているお金。


<佳子>
 それって、変じゃありませんか。
<中洲先生>
 どういうことかな。
<佳子>
 だって、市中の銀行が日銀にお金を預ける制度は、万が一の為に預けるとか、経済の引き締めのための制度じゃなかったのかしら。
<中洲先生>
 佳子君もよく勉強しているね。
<研一>
 先生、分からなくなってきました。自信なくしそうだ。



以下、次回に続きます。





経済ニュースゼミ(第2号、2004,11,20)
 みなさんこんにちは、Seijiです。
 本日が、土曜日で、週明けて月曜日に少し働くと、また勤労感謝の日で休みですね。と言っていると、「ずーっと仕事よ」というような声も聞こえてきそうですが、それぞれお励み下さい。

 さて、前回の日銀当座預金の話の続きを始める前に、GDPの見直しがニュースになっていたので、その話を少ししたいと思います。


☆★☆★☆★
GDPの見直し
☆★☆★☆★


<佳子>
 先生、GDPの見直しを行なったと新聞に出ていましたが、計算ミスでもしていたんですか。
<研一>
 そんなことはしないよ。速報値を確報値に変更したんじゃないの。
<中洲先生>
 そういうことだったら、大きく扱われることもなかったかもしれないけど。
 今回実質GDPの成長率が変更されたんです。今年の7-9月期のGDPの実質成長率は、前期比0.3%とされていたのが、実はマイナス0.1%ということになってしまった。


<研一>
 実質成長率が変更されたということですが、併せて名目成長率も変更になったんですか。
<佳子>
 それはそうなんじゃない。そうしないと理屈にあわないよ。
<中洲先生>
 そうでもないんだ。名目成長率はそのままだ。変更なし。
<佳子>
 どういうことですか。
<中洲先生>
 今回は、GDPデフレーターを見直したんだ。その結果、実質成長率が見直された。
<佳子>
 なんだか全然分かんない。


<中洲先生>
 研一君、名目成長率と実質成長率の違いは?
<研一>
 国内総生産の成長率を見る場合、物価の変動率を加味するかどうかということです。
<佳子>
 思い出した。名目成長率が10%と高い成長を示しても、そのときのインフレ率が10%だとすると、実質成長率はゼロというやつね。


<中洲先生>
 荒っぽく言えばそのとおりです。
 で、名目GDPを実質GDPに割り戻す物価変動率のことをデフレーターと呼んでいる。
 さっきの佳子君の話では、インフレのときは、名目で成長しているように見えても実質ベースでは低めに出るという話だったよね。では、デフレ状態ではどうでしょうね。
<研一>
 最近のようなデフレでは、名目のGDPが低下しても、実質ベースではプラス成長になることが起こっています。
<中洲先生>
 そうですね。物価の下落幅の方が、名目GDPの下落幅を上回ると、そうなりますね。
<佳子>
 お給料が少し下がっても、オフィス街のランチの値段がもっと下がったり、洋服の値段が下がれば、それほど生活は苦しくならないのと同じね。

<中洲先生>
 今回そのデフレーターの見直しをやったんだよ。
<佳子>
 どうして、見直したんですか。
<中洲先生>
 デフレーターと消費者物価指数や企業物価指数の乖離が大きくなっているんじゃないかという声が出てきたからだよ。
<研一>
 どういうことですか。
<中洲先生>
 消費者物価指数も下落傾向が続いているけど、デフレーターの方はそれ以上に下落率が大きい。つまり、デフレーターで割り戻すと実質成長率が大きくなりすぎるんじゃないかという疑問の声が上がっているわけだ。

<佳子>
 なんでそんなことが起こるんですか。
<中洲先生>
 一つには、消費者物価指数や企業物価指数の基準年は2000年であるのに対し、デフレーターの方の基準年は1995年と古いためだ。基準年が古いと、価格低下の激しい品物の影響がより大きく出てくるからね。
<佳子>
 デフレーターの方も2000年を基準年にしたんですか。
<中洲先生>
 そうらしい。
(注)基準年が毎年変わる連鎖方式になったと言うのが正解。


<研一>
 そして、その見直しを行なったデフレーターで、名目GDPを実質GDPも算出しなおしたということですか。だから、名目GDPには変化はないのですね。
<中洲先生>
 そういうこと。
<佳子>
 見た目は同じだけど、実質は変わっているということだよね。うちのお姉ちゃんの若作りみたいね。見た目は相変わらず若いけど、すっぴんではというやつね。
<中洲先生>
 それについては、ノーコメント。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
日銀当座預金について
★★★★★★★★★★


<佳子>
 日銀当座預金というのは、市中の銀行等が日銀に預けてあるお金のことなのですよね、再確認しますが。
<中洲先生>
 そうだよ。
<研一>
 先生、僕はてっきり日銀が市場に放出する資金のことを意味していると思っていたのですが、違うのですか。
<中洲先生>
 あいにくだけど。


<研一>
 だけど、そうだとしたら、日銀の政策委員会のやっていることが理解できないんですが。
<佳子>
 そうだよね。
<中洲先生>
 ねえ、分かりにくいでしょ。ですから、私は説明したくなかったんですよ。
 では、そろそろ帰ろうかな。
<佳子>
 駄目です。教えて。
<研一>
 そうですよ。分かりやすく教えて。


<中洲先生>
 教えることはできるかもしれないが、分かりやすくという注文には応えられるかどうか。
 あのね、私は今の政策にあまり賛成していないものだから、説得力のある説明は出来ないのだけど、今の政策を進めている人の立場になって説明しますね。
<佳子>
 先生、じれったいよ。
<中洲先生>
 そうだな、インフレターゲット論というのを知っていますか。
<佳子>
 そんな言葉を持ち出すと益々分からん状態。
<研一>
 覚えています。最近少し収まりましたが、数年前に盛んに議論になったテーマです。要するに、景気回復の為に、デフレを脱却すべきだと。そして、デフレを脱却するには、日銀が物価を上昇させるように誘導すべきで、その際の物価上昇の目標値を設定すべきだという議論だったと思います。
<中洲先生>
 研一君、すばらしいね。
 ところで、そのような意見を言っていたのはどういう立場の人か分かりますか。


<佳子>
 どういう立場というと、どういう組織かと言う意味ですか。
<中洲先生>
 そうじゃなくてね、どういう経済学的な考え方の人たちかということです。例えば、マネタリストとか。
<研一>
 思い出した。マネタリストの人たちが主流だったと思います。で、彼らは日銀のことをぼろくそに言っていました。日銀がインフレ目標値を採用しないのを怒っていましたね。


<佳子>
 よくわかんないけど、インフレになると、トイレットペーパーを買いだめしたりするんでしょ。値段もどんどん上がるし。やっぱり、インフレはよくないんじゃない。
<中洲先生>
 インフレターゲット論者も、インフレが起こるのを期待した訳ではないんだよ。だけど、2-3%くらい物価が上がった方が、デフレよりいいじゃないかと考えたんだね。
<研一>
 確かに、そうなると買いたいものを先延ばしするようなことは起こりにくくなりますね。じゃ、マネタリストさんたちは、いい意見を言っていたんですか。
<中洲先生>
 そう単純でもない。マネタリストさんたちは、景気回復のためにマネーサプライを増やすことが重要だ、そして、そのためにはベースマネーを増やすべきだと主張したんだね。


<佳子>
 先生、私わかんなくなっちゃった。マネタリストって一体なんですか。ベースマネーとかいうのも分かんないし。
<研一>
 先生、僕に説明させて。
 あのね、マネタリストというのは、簡単に言うと、景気をよくするためには、世の中に出回るお金の量を増やせばいいと主張する経済学者のことだよ。
<佳子>
 そうなの。お金さえ沢山発行すれば、景気はよくなるものなの?
<研一>
 改まってそういう質問されても困るけど、そういうものだ。30年くらい前にフリードマンという人はその理論でノーベル賞をもらったくらいだから。
<佳子>
 その偉い人の書いた論文読んだの?
<研一>
 僕は読んでいないけど、マネタリスト的な学者は大勢いるから、日本でも支持されている考えだよ。


<佳子>
 だけど、お金を沢山発行するだけで景気がよくなるなら、何も苦労はいらないんじゃない。アフリカの国だって、中南米の国だって、貧乏な国なんてなくなってしまわないとおかしいと思うけど。
 先生はどう思います?
<中洲先生>
 佳子君の言うとおりかもしれないが、そこの議論を始めるとややこしくなるから、取り敢えず他の条件は一緒で、マネーサプライの量だけが違うような国が存在すると仮定して、その場合どちらがより経済が拡大しやすいかと考えたらどうだろうか。
<佳子>
 わかりました。

以下、次回に続きます。





経済ニュースゼミ(第3号、2004,11,24)
 みなさんこんにちは、コラムニストのSeijiです。
 街を歩いていると、クリスマスの飾りつけも始まっています。本屋さんには来年のカレンダーが一杯並んでいます。1年も、あっという間ですね。
☆★☆★☆★☆★☆★☆
日銀当座預金について
☆★☆★☆★☆★☆★☆


<佳子>
 先生、ベースマネーというのは何なのですか。
<中洲先生>
 マネーサプライの基になるものという意味で、世の中に出回っている現金と市中銀行等が日銀に預けている当座預金の合計のことだよ。
<佳子>
 マネーサプライというのは、何でしたっけ。
<研一>
 あのね、じゃ、おさらいしようね。
 誰かが、100億円預金したとするでしょ。
<佳子>
 へー、お金持ちがいるもんだ。
<研一>
 真面目に聞けよ。でね、銀行はその預かった100億円どうする?


<佳子>
 そのお金の預かり方によるんじゃない。だって、普通預金とか、当座預金だったらいつ引き出されるか分からないから、それを誰かに融資して利鞘を稼ごうとしても、安心して貸せないし。
<研一>
 じゃ、設問を変える、いろんな人からお金を預かっている銀行がある。で、預金される分もあり、引き出される分もあるけど、毎日100億円くらいは残高として残っている。これをどうする。
<佳子>
 それだったら、その100億円は景気のよさそうな企業にでも融資して、利息を稼がせてもらうのかな。
<研一>
 そうだよね、融資するか、国債などに投資する。
 仮に、預かったお金の9割を誰かに融資することができたとすると、そのお金が元の預金者から銀行を経てどこかの企業に行く。で、その企業もそのお金を使って事業をすると、誰かがそれを自分のものにし、また、銀行に預金する、こういう行為が果てしなく続くわけだ。


<佳子>
 研一君はそれを言いたかったの?それなら知っているよ。貨幣乗数とかいうやつね。お金というのは、実際の現金以上にどんどん自己増殖していくという話でしょ。
<中洲先生>
 それがマネーサプライの考え方だね。要するに現金だけをマネーと考えるのではなく、実際所有されているお金に加え、当座預金や普通預金も現金と同じ効能を発揮できるからマネーとしてカウントしようという考えだ。
<佳子>
 分かりました。そういうことか。


<中洲先生>
 随分と話が横路にそれたけど、元に戻すよ。
 で、そういうマネタリストの人たちが、景気を回復させるためには、マネーサプライを増やせと声高に叫んでいたんだよ。で、当然のことながら、マネーサプライを増やすために、ベースマネーも増やせと。
<佳子>
 で、日銀はどんどん増やしたんですか。
<中洲先生>
 そうできれば、論争は起こらなかった。でも、日銀の立場は、簡単にはベースマネーを増やすことはできない、日銀は受身の立場だ、というものだった。
<研一>
 思い出しました。それで、マネタリストが怒ったのですね。
<中洲先生>
 そうそう。現金を発行するといっても簡単には出せない。ちゃんとした裏づけがいるというのが日銀の立場。


<研一>
 そうして、マネタリストは、そんなことはない。どんどんお札を刷ればよいと言っていました。そのために、日銀が土地を買っても言いし、銀行が保有している国債をどんどん購入してもいいと。そうすれば、お札が世の中に出回ると言っていました。
<中洲先生>
 そうでしたね。前の日銀総裁も随分悪者にされていましたね。何にもしない頑固者みたいに思われて。私なんかにすれば少し気の毒なくらいですが。
<佳子>
 前の日銀総裁は何にもしなかったのですか。
<中洲先生>
 そんなことはないよ。今回のテーマの日銀当座預金残高の目標値設定も速水総裁時代に導入されたものですしね。
<佳子>
 先生、その日銀当座預金について私たち話をしていたんですよね。
<中洲先生>
 そうそう。


<佳子>
 思い出したけど、どうして金融機関の融資姿勢を引き締めさせるための準備預金制度を景気回復の手段にしたんですか。
<研一>
 ちょっと待った。少し分かりかけてきた。
<佳子>
 どういうこと。
<研一>
 あのね、マネタリストはね、マネーサプライを増やしたがった。これはわかるよね。
<佳子>
 私は、マネーをふやしても簡単には景気回復に繋がるとは思わないけど、彼らがそう考えるのは理解できるわよ。


<研一>
 素直だね。で、マネーサプライを増やすためには、ベースマネーを増やさねばならない。分かる?
<佳子>
 一応ね。
<研一>
 だったら、答え分かんない?
<佳子>
 全然。
<研一>
 ベースマネーって何?
<佳子>
 現金と日銀当座預金でしたっけ、先生。あっ、そうか。日銀当座預金か。
 でも、日銀当座預金を増やすには、市中の銀行に今まで以上にお金を日銀に預けさせなくてはいけないんでしょ。そうしたら、益々事業者に融資できなくなってしまうじゃないの。
<研一>
 あっ、そうか。やっと理解できたと思ったのに。


<中洲先生>
 二人ともいいところを突いているよ。二人の考え方のどちらも正解。
 だけど、佳子君の心配のとおり、何にもしなくて市中銀行にお金を沢山日銀に預けさせると逆効果になるからね。そこで工夫が必要になる。
<佳子>
 何をしたんですか。
<中洲先生>
 日銀が今まで以上に市中銀行から国債や手形を買い上げて、沢山資金を放出する仕組みをつくったんだよ。そして余ったお金を日銀の当座預金勘定に預けさせた。
<佳子>
 へー、そういうことだったんですか。
<研一>
 なるほど、それだったら、マネタリストも大喜びですね。

以下、次回に続く

(注)ベースマネーは、マネタリーベースとも言います。






経済ニュースゼミ(第4号、2004,11,26)
 みなさんこんにちは、Seijiです。
 このマガジンを読んで下さっているのは、どんな人たちでしょう。ごく一部の知り合いの人には無理やりお勧めしましたが、殆どの方は、バックナンバー等をご覧になって登録下さったことと思います。
 思ったより面白くないのね、とか、やっぱり、難しいのね、とかそれぞれにご感想がおありかと思いますが、分かりやすくということを目標に努力していきますので、よろしくお願いします。

 ところで、新聞でセクハラならぬ「アカハラ」なる言葉を発見しました。大学の先生がそのポストを利用していじめや嫌がらせをするということだそうです。アカデミック・ハラスメントの略だとか。
 最初、腹の赤いイモリを連想しましたが、アカハラは頂けないですよね。それにDVで、ドメスティックバイオレンスの略というのも頂けません。

 では、日銀当座預金の話の続きをしましょう。

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆
日銀当座預金について
☆★☆★☆★☆★☆★☆



<佳子>
 量的緩和措置という名前からして、沢山日本銀行がお金を市場に放出しているのは想像つきますが、単に国債や手形の買いオペをやって、資金を放出するだけではダメなのですか。
<研一>
 どういうことだい。


<佳子>
 さっきまでの話で、マネタリストの人たちがマネーサプライを増やしたいというのは分かりました。そのためにベースマネーを増やしたがったのよね。だから、お札を沢山刷るか、日銀当座預金を増やして、マネーサプライが増える土台を作りたいということよね。

 でも、普通金融を緩和するというときに、日銀当座預金のことまで結びつけて議論することはなかったんじゃないの。学校で習ったのも「日銀は金融を緩めるために、市中銀行が保有している国債や手形を買います。これによって、市中銀行は、資金繰りが楽になり新規の融資が行ないやすくなります」というようなことだったよね。
 日銀当座預金のことなど、学校では習わなかったよ。


<中洲先生>
 やっぱり、佳子君はそこのところがひっかかるんだよね。
<佳子>
 だって、当座預金は、民間の銀行が、日銀にお金を預けるんでしょ。金融緩和というのであれば、国債や手形の買いオペで資金を放出するだけでいいんじゃないの。
<研一>
 そう言えばそうだね。本来、預金準備率が低ければ低いほど、金融は緩むはずだよね。


<中洲先生>
 いいところに気が付いたね。準備預金制度というのは、預金者の皆から集めた預金総額のうち、一定の割合は、日銀に預けときなさいという制度だったよね。
<佳子>
 そうです。そうです。そうしとかないと、急に預金者がいつもより多めに引き出すような動きに出たときに対応できないし、また、この準備率を上げたり下げたりすることによって、金融を引き締めたり緩めたりするわけですからね。
<中洲先生>
 全くそのとおりだね。その準備預金制度の結果が、日銀当座預金ということだからね。


<研一>
 日銀は日銀当座預金残高の目標値を達成するために、預金準備率を引き上げているのですか、先生。
<中洲先生>
 いや、そんなことはやっていない。そんなことをしたら、佳子君が言ったとおり、金融引き締めになってしまうからね。
 預金準備率は引き上げないが、沢山資金を放出して、日銀当座預金残高が増えるような状態を創出しているんだよ。


<佳子>
 だけど、先生、いくら日銀が量的に金融を緩和したとしても、日銀の当座預金は利息が付かないのでしょ。
<研一>
 何が言いたいのかな。
<佳子>
 市中銀行は、利息もつかないのにどういう理由で、日銀から求められている以上の資金を日銀に預けるのかな、ってことなんです。
<中洲先生>
 全く、佳子君の言うことに同感だね。


<研一>
 だけど、年末や年度末で資金繰りがタイトになるときもあるから、そういうときの為に当座預金として保有しておくということもあるんじゃないのかな。利息が付かずに損しているみたいだけど、資金が逼迫しそうなときに慌てて資金を集めようとしても、金利が急騰して却ってコストがかかったりもするから。そうじゃないですか、先生。
<中洲先生>
 全くそのとおり。


<佳子>
 先生は、私の考え方に賛成してくれたようですが、研一君の意見にも賛成なんですか。
<中洲先生>
 基本的には、佳子君の考え方でいいんだよね。確かに金利がつかないから民間の銀行が喜んで当座預金を積んでおく積極的な理由はない。特に、金利水準が高いときはそうだよね。しかし、考えてごらん、今の金利水準。コール市場の金利水準は、0.001%刻みになっているんだよ。
<佳子>
 コール市場の金利がほぼゼロ%だというのはどこかで聞いたような気もしますが。


<中洲先生>
 無担保コール翌日物で100億円を0.001%で運用したとして、どれだけの利息収入が得られると思うかい。
<佳子>
 100億円も運用するのでしょ。
<研一>
 しかし、1日だし、0.001%の利子率ですよね。計算すれば分かると思いますが。
<佳子>
 数万円ですか。
<中洲先生>
 では、選択問題。 1. 27,300円  2. 2,730円  3. 273円
 さあ、どれかな。


<研一>
 2番の2,730円ですか。
<中洲先生>
 答えは、3番。273円、ねえ、安いでしょ。これだけ安いとね、所謂ディーリングでお金を稼ぐことができなくなってしまう。273円じゃ、人件費も賄えないということだよ。
<佳子>
 だから、資金繰りにゆとりが出て本来であればコール市場で運用するようなことを考える銀行も、この低金利下ではそうした行動に出ないということですか。
<中洲先生>
 そういうことだね。


次回に続く





経済ニュースゼミ(第5号、2004,11,29)
 こんにちは、Seijiです。
 みなさんは、この経済ニュースゼミを読んでくださっていますが、実際の経済の運営の仕方に対して意見や注文はありますか。或いは、そんなのはどうでもいいから、景気が手っ取り早くよくなって欲しいと思っていますか。

 私自身は、やはり少しでも納得できる政策をとるべきだと考えています。そうしないと、真に経済が回復することはないと信じているからです。もちろん、経済は生き物ですので、外部的な要因によって、景気よくなったり不況になったりもしますが。

 この日銀当座預金のテーマを追っていくと、純粋な経済論争というよりも、ドロドロした人間模様が垣間見えてきます。まあ、場合によっては面倒くさい経済論議よりも興味をそそることも多いのですが、ただ、政治的判断でだけ物事を決めても、本質的な解決には繋がりません。その場しのぎに終わることが多いと思います。



 では、日銀当座預金の話の続きをしましょう。


☆★☆★☆★☆★☆★☆
日銀当座預金について
☆★☆★☆★☆★☆★☆


<研一>
 結局、日銀当座預金残高を目標値にしたというのは、マネタリスト的な考え方と切り離しては考えられないということですか。
<中洲先生>
 私は、そう考えるね。何故なら、単に金融を量的に緩和するためだけなら、日銀が、市中銀行が保有している国債や手形などを買いまくればいいだけの話だからね。そこに日銀当座預金を結びつけるのは、日銀当座預金がベースマネーの構成要素だということを抜きにしては考えられないのだよ。
<研一>
 そうですよね。ようやく分かりかけてきた。


<佳子>
 だけど先生、日銀当座預金をしているのは民間の銀行なのだから、日銀当座預金残高を高目に維持しようとすることは、一旦民間の銀行に資金を放出した資金の一部を当座預金として拘束しているという見方もできるんですよね。
そこのところをどう考えるんですか。
<中洲先生>
 佳子君、そのとおりなんだ。僕に言わせると、現在の量的緩和措置というものを正確に理解している人は、非常に少ない。政治家なんかでもあんまりよく理解していなくて、ただ、量的緩和だと表面的に理解しているに過ぎない人が多すぎるようにも思える。


<佳子>
 みんなあまりよく理解していないのに現在の量的緩和措置を続けろと言っているんですか。
<中洲先生>
 量的緩和措置というのが、さっきから佳子君が言っているような単純な量的緩和であれば、問題もないし誤解もない。しかし、今日銀が言っている量的緩和措置というのは、日銀当座預金の目標値を達成することを意味しているから、事態がややこしくなっているんだよ。本当にややこしい。


<研一>
 日銀などは、日銀当座預金残高の目標値を設定することにどういう説明をしているのですか。
<中洲先生>
 そうだね、そのことにも言及しとかないと、マネタリストや日銀政策委員の方々にも悪いよね。

 日銀が公式に言っているのは次のとおりだ。
(1) 短期金利の一層の低下
(2) ポートフォリオ・リバランス効果
(3) 期待効果


<佳子>
 何のことかさっぱりわかんないよ。
<研一>
 日銀の当座預金残高の目標値を高くすると金利が下がるんですか。
<中洲先生>
 私がそう言っているんじゃないよ。日銀がそう言っているんだ。
<佳子>
 でも、日銀当座預金残高の増加が預金準備率引き上げの結果だとしたら、全く逆の話になるよね。
<中洲先生>
 だから、預金準備率はそのままだし、国債とか手形の買いオペをどんどんやった結果、当座預金残高が増えるような場合にはという、前提条件付ではということだろうね。
<佳子>
 そういうことなんですか。
<研一>
 だったら、それは日銀当座預金残高の目標値を引き上げた結果というよりも、単に買いオペの結果ということじゃないんですかね。


<佳子>
 そうだよね。
 ポートフォリオのリバランス効果って何ですか。
<中洲先生>
 難解だね。
 ポートフォリオというのは、銀行が保有する資産のことかな。そしてリバランスというのは、バランスを取り直すというようなことだろうから、資産内容の見直しのことを言うのでしょうね。簡単に言うと、投資戦略、或いは資金運用政策を見直すということかな。
<研一>
 日銀当座預金とどう関係しているんですか。
<中洲先生>
 佳子君が何度も言っていたよね。当座預金には利息がつかないって。
<佳子>
 それがどう関係するんですか。


<中洲先生>
 日銀当座預金が無利息であるから、市中銀行は、収益改善のために高利回りの運用を目指すようになるだろう、従って融資が伸びるようになるだろうというものだよ。
<佳子>
 何か理解できません。先生はその考え方が理解できるんですか。
<中洲先生>
 これは、あくまでも日銀の考え方を紹介しているだけだよ。私は、この考え方に全く否定的だよ。
<研一>
 日銀に当座預金を多めに預けるということは、それだけ収益の機会が失われる。そこで、それを補うために、リスクはあるが利息収入が多く期待できる融資案件に積極的になるということですか。
<中洲先生>
 研一君ものわかりがいいね。


<佳子>
 先生、先生は日銀の考えに賛成できないって言っていたじゃないですか。
<中洲先生>
 それは、そうなんだが、研一君は日銀の言いたいことを直ぐ理解したので、感心しただけだよ。
<佳子>
 先生、でもそのリバランスとかいうのはおかしいのじゃないのですか。
 だって、銀行はそもそも貸したいと思う融資案件が見つからないので、国債などの低金利の商品で運用しているのでしょう。その国債を日銀に買い取ってもらって、余裕資金ができたからと言って、どうして融資案件が見つかるんですか。だからやっぱり変だよ。

以下次回に続く。





経済ニュースゼミ(第6号、2004,12,1)
 12月に入りました。でも、あまり寒くもなく師走らしくありませんが、お昼のニュースで、近所の弁護士事務所に不審な男が灯油を持って押し入ったとありました。裁判に負けたのは弁護士のせいだと言っていたとか。物騒なものです。

 街に出ると宝くじを買う列が出来ています。これはやはり12月らしい風景でしょうか。
 
 話は飛びますが、クレジットカードの引き落としの明細を見ていたら、心当たりのないものが含まれていましたので、カード会社に早速電話しました。請求先がアメリカで、調べるのに少し時間がかかるとのことでしたが、カードの番号は変更しましょうということになりました。
 みなさんも、カード会社の引き落としの明細にはよく目を通すことをお勧めします。

 では、前回の続きをやりましょう。




☆★☆★☆★☆
日銀当座預金
☆★☆★☆★☆


<研一>
 そう言われりゃそうかもしれない。ポートフォリオのリバランス効果というのは、今の日本では期待できないんでしょうか。
<中洲先生>
 私は、残念だけどそう思う。
<佳子>
 そもそもポートフォリオのリバランスなんて、横文字だけど誰が言い出したんですか。
<中洲先生>
 外国の学者でそういうことを言っている人がいる。
<佳子>
 それを、日本の学者も勉強したんですか。
<中洲先生>
 まあ、そういうことだろうね。


<研一>
 今思いついたんですけど、例えば、こういう設定だったらそのポートフォリオのリバランス効果というのが期待できるんじゃないですか。
<佳子>
 どういうこと。
<研一>
 あのね、中央銀行がね、景気が過熱しているようだから心配になって、預金準備率を引き上げるとする、そうすると市中の銀行は、日銀当座預金勘定に預ける無利息の預金を増やすよね。
<佳子>
 だって、そうしろと中央銀行が命令するわけでしょ。
<研一>
 そうそう。そうすると、各銀行は、当初予想した収益計画が狂ってくる。何故ならば、預金準備率の引き上げがなかったら、その分を利息が得られる融資などに回すことが出来たからだ。そうするとどうなる。


<佳子>
 えっ、どうなると言われても、それが中央銀行の命令なんでしょ。
<研一>
 でも、ある銀行は、収益の目標を立てていて、どうしても達成したいと。そうすると、リスクは高いがリターンも大きい、要するに、金利が高い融資案件を目指すことになる。
 そういうことですよね、先生。
<中洲先生>
 ぐっじょぶ。
<佳子>
 何ですか、先生。
<中洲先生>
 Good job. 研一君は呑み込みが速い。


<研一>
 それでは、最後の期待効果というのはどうなんですか。
<中洲先生>
 これも説明困難だね。今までずーっと話してきたように、日銀当座預金の目標値設定については、殆ど正確に理解されているとは思われないからね。
<佳子>
 先生は、量的緩和措置そのものに否定的なんですか。
<中洲先生>
 量的緩和ということに否定的じゃないんだよ。量的緩和ということと日銀当座預金を結びつけたことに否定的なんだ。



以下次回に続く。





経済ニュースゼミ(第7号、2004,12,3)
 皆さん、こんにちは、Seijiです。
 今日の朝日新聞では、日銀当座預金残高を扱っています。30兆円維持するのに苦心と書かれています。日銀当座預金の残高を目標値にしたばっかりに、面倒くさいことになりました。
 一方、3ヶ月ものの政府短期証券が異常な人気らしく、11月24日に実施した入札では、平均落札金利は、0.001%を下回る0.0007%となったとのことです。スパイ映画の007ならぬ0007ですね。
 ところで、0.0007%となるためには、金利ゼロパーセントで入札に応じた業者がいたことを意味するらしいですが、どういう考えで、ゼロ金利でも政府短期証券を落札しようとしたのでしょうか。3ヶ月たっても金利がゼロですので、現金を保有していても同じことだと思うのですが、何かメリットがあるのでしょうか。
少し、調べて何か分かれば報告したいと思います。


では、前回の続きを始めましょう。


★☆★☆★☆★
日銀当座預金
☆★☆★☆★☆

<佳子>
 今までの先生の話を聞いていると、先生は、今の日銀の金融政策をあまり支持していないような気がしますが。
<中洲先生>
 デフレが続き、景気回復が地方まで浸透してきていない現状のなかで金融緩和措置をとること自体には反対しない。むしろ、支持するよ。しかし、繰り返しになるけど、当座預金残高の目標値を設定し、それを達成することがイコール金融緩和措置と考えられていることに反対しているのだよ。


<研一>
 日銀の金融政策委員会のメンバーとか日銀の事務局の考え方はどうなんですか。
<中洲先生>
 金融政策委員会のメンバーはいろんな人がいるから、一言では何とも言いがたいけど、日銀の事務局はどうだろうかな。
<研一>
 どういうことですか。
<中洲先生>
 仮に、マネタリーベースを増やすことができたにしても、それがダイレクトにマネーサプライの増加に繋がり、そしてまた民間銀行の貸出しの増加に繋がるかは確証がないからと考えているからね。やるべきことはやった、むしろ構造改革をどんどん進める、あるいは不良債権の直接償却をどんどんやる、そういうことが必要だと日銀は言い続けていたからね。


<研一>
 でも、そういう発言をしていたので、政治家の先生やマネタリストの立場の人からはすごい口調で批判されたんですよね。
<中洲先生>
 それに財務省関係者も、本当はどのように考えていたかは不明だけど、財政措置の発動にはもともと消極的だ。それに、国の借金が膨大になり、小泉総理が公共事業の削減を主張したので、日銀が景気回復にもっと積極的になるべきだと主張した。
<研一>
 考えてみると、日銀はいろんなことをやったんですよね。やらされたというべきかな。


<佳子>
 どんなことをやったの。
<研一>
 どんなことかというとね、それまでの日銀ではとても考えられないこと。
<中洲先生>
 じらさないで教えてあげたら。
<研一>
 日銀は、市中の銀行が保有していたが株式を買い上げたんだよ。日銀がだよ。あれっ、佳子さんは、驚かないんだね。
<佳子>
 先生、日銀が銀行の持っている株を買うのは驚くほどのことなんですか。
<中洲先生>
 それはそうだろうね。みんな驚いたよ。


<佳子>
 だけど、どうして、そんな驚くようなことを日銀はやったんですか。
<中洲先生>
 だからね、景気が落ち込み株価も下落したからね。理屈とかではなくてね、政治家やエコノミスト、或いは政府関係者からさんざんバッシングにあって、何かをやらなくてはいけない雰囲気にあった。そういうことだよね。同時多発テロの影響もあった。株価も下がるところまで下がった。
<研一>
 日銀当座預金残高の目標値設定も、そういうことが背景にあるんですかね。
<中洲先生>
 日銀当座預金残高を目標値にしたのは、銀行保有株式の買い上げ決定の1年以上前の時点だけど、当時、株価が下落傾向にあり景気も後退して、皆に焦りがあったからね。

 日銀当座預金残高目標を設定するに至る経済の流れをおさらいしておこうね。
 じゃあ、速水総裁就任のころから思い出してみようか。研一君、速水総裁が就任したのを覚えているかい。


<研一>
 大蔵省バッシングとか日銀バッシングの頃でしたっけ。
<中洲先生>
 平成10年の春、1998年だ。銀行とか証券会社が破綻し、金融当局や日銀も批判を受けた。これではいけないということで、世の中のシステムが変わり始めた頃だよ。
<佳子>
 そういえば、今の金融庁の前身の金融監督庁が発足したのもこの頃でしたっけ。
<中洲先生>
 平成10年の6月だね。
<研一>
 新日銀法が施行されたのも、平成10年の4月でしたっけ。
<中洲先生>
 そうだね。ただ、金融機関の経営問題は、収まるどころか悪化する。経済状況も悪化する。日経平均株価も12千円台となり、不況感が強まる。そういう状況だった。


<研一>
 そして、平成11年2月には、ゼロ金利政策に着手という訳ですね。
<佳子>
 先生、ゼロ金利といっても、長期の金利はゼロにはならなかったんでしょ。今でもゼロではないと思いますが。ゼロ金利とは一体何のことなんですか。
<研一>
 それは短期金利のことだよ。ねえ、そうですよね、先生。
<佳子>
 短期金利といっても、いろいろあるでしょ。
<中洲先生>
 前に言ったでしょ。無担保コール翌日物って、やつだよ。
<研一>
 ああ、思い出した。
<佳子>
 無担保コールですか。よく分かんないな。


次回に続く。




経済ニュースゼミ(第8号、2004,12,6)
 みなさん、こんにちは。Seijiです。
 本日の日経新聞によれば、7-9月期の海外投資家の米国国債の買い越し額が大きく減少していると報じています。

 ご承知のとおり、アメリカには双子の赤字の問題があります。とりわけ経常収支の赤字は、頭が痛い。経常収支の赤字を減らすには、ドル安にして輸出を伸ばし、輸入を抑えることが考えられる。ただ、ドル安になると、ドル資産への投資が魅力のないものになり、海外からの資金流入が細り、金利の上昇をもたらすと考えられる。金利の上昇がおこると、景気回復の足かせになってしまう。

 また、政治的に考えれば、自国の通貨が強いと言うことは、それだけ海外からの信頼が厚いということを意味するが、行き過ぎたドル高を放置することには、産業界からクレームが付く。
 あちらを立てればこちらが立たず。難しい問題のようです。

 ところで、前回、FB(政府短期証券)に利回りゼロで入札した業者がいたと紹介しましたが、外銀がマイナス金利で円を調達し、その運用先として政府短期証券を選んでいるようです。日銀当座預金に預けておいても、同じく金利が付かないと言う意味では同じですが、外銀の場合、クレジットラインの上限を設けている(日銀当座預金の保有上限を設けている)ので、日銀当座預金以外で、運用先を見つけなくてはいけないという事情があるようです。

 では、その日銀当座預金について、前回の続きを始めましょう。


☆☆☆☆☆☆☆
日銀当座預金
★★★★★★★


<研一>
 無担保コールということから、コール市場の金利だというのが分かるだろう。
<中洲先生>
 銀行同士でお金を融通しあっているんだよ。短資会社というのを聞いたことがあるかい。銀行間で、資金繰りが逼迫している銀行と余裕がある銀行との間に入って、資金のやり取りを手助けするんだよ。
<佳子>
 資金繰りが逼迫しているというのは、経営内容が悪化し、皆が預金を引き出すからですか。
<中洲先生>
 そういう場合もないではないだろうが、基本的にはそういうことを想定していないんだよ。
 佳子君は、準備預金制度に少し詳しかったよね。あれはどういうことだったのか、言ってみてくれるかな。


<佳子>
 皆から預金を集めている銀行が、日銀にその預金合計額の一定割合を預けておく制度でしょ。で、その預けておく割合を準備率と呼んで、その準備率を引き上げたり、引き下げたりして、金融を引き締めたり緩和したりできる。
<中洲先生>
 そうだよね。ただ、市中銀行が日銀に当座預金をしておくのは、準備預金制度があるからだけかな。
<佳子>
 日銀当座預金には利息が付かないんでしょ、だったら、準備預金制度がなければ、どこの銀行だってわざわざ日銀当座預金にお金は預けないと思いますが、違いますか。


<研一>
 ちょっと待って。僕たちだって普通預金に預金しているけど、金利は殆ど0に等しい。だから、市中の銀行も、たとえ利息がつかなくても少しは日銀当座預金にお金を預けるんじゃないかな。
<佳子>
 私が普通預金をしているのは、自分で全部持っていると危ないからだけど、市中の銀行は、皆立派な金庫があるから心配ないんじゃないの。
<研一>
だけど、普通預金口座を持っていないと、電気料金の引き落としとかできないし、給料も振り込まれないよ。
<佳子>
 それは分かるけど、各銀行が電気代を払ったりするのに日銀当座預金口座が必要になるのかしら。
<研一>
 電気代の支払いはどうか知らないけど、年金の支払いとか国債の償還で、国から民間部門にお金が流れてくるときに、その受け皿になる預金口座がないと困ったことになるんじゃないかな。


<中洲先生>
 それに、民間企業が税金を納入する際、市中の銀行を経由して納めることが一般的だよね。そのときの受け皿として日銀当座預金口座があり、その口座から今度は政府の預金口座へ移ることとなる。
 言ってみれば、日銀当座預金口座がないと、国と民間との資金の移動が出来にくくなるのだ。それがなければ、そうした資金の移動がある都度実際に現金を運ばなくてはいけなくなるからね。ところが、日銀当座預金口座というのがあると、そこに振り込むだけで済むからね。振り込むだけなら実際にお金を運送する必要はなく、残高の数字を増減させるだけでいい。
<佳子>
 そうだったんですか。そうすると日銀当座預金は、決済システム上なくてはならない存在なんですね。


<中洲先生>
 それに、実際は準備預金制度というのがあるよね。預金総額のうち一定割合を日銀に預けなくてはいけない。その際、資金需要が旺盛な銀行は、準備預金として預けておくべきお金がすぐ足りなくなる傾向があるが、資金需要が弱く運用先が少ない銀行は、資金繰りに余裕がある場合が多い。そうした異なった事情の銀行間で、資金のやり取りが行なわれるわけだよ。
<佳子>
 そのときに、短資会社が活躍するんですね。
<中洲先生>
 そのとき、余裕のある銀行の日銀当座預金の残高が減り、その分余裕のない銀行の日銀当座預金の残高が増える形となる。
<研一>
 それがコール市場ということなんですか。
<中洲先生>
 そうだよ。



以下次回に続く。






経済ニュースゼミ(第9号、2004,12,8)
 みなさん、こんにちは。Seijiです。
 新聞読んでいたら、ニートの特集記事がありました。「ニートって何だって」と言う人も多いかもしれません。フリーターとでも言うのでしょうか。そうじゃありませんよね、フリーターは正規の職員ではなくても働くわけですから。ニートとは、働かず、働く意志もない人のことらしいです。

 最近こういうわけの分からない英語が多くていやですね。私の嫌いなのは、DVと書いて、ドメスティックバイオレンスと読ませるやつが代表ですけど、このニートは一体何の略なのでしょうね。新聞を読み進んでいったら出ていました。

 Not in Education, Employment, or Training とありました。

 今ニートと言って理解できる人は、日本人のうち何パーセント位なんでしょうね。「エーと、それは」なんちゃったりして。

 では、その日銀当座預金について、前回の続きを始めましょう。



☆☆☆☆☆☆☆
日銀当座預金
★★★★★★★


<佳子>
 少し分かってきた気がしますが。そうすると、日銀当座預金残高を増やしてあげる行動は、銀行の資金繰りを緩やかにしてあげることにつながるんだ。
<研一>
 そりゃそうだと思う。僕たちの普通預金口座の残高が増えると、安心して買い物ができるのと同じだもんね。
<中洲先生>
 取り敢えずは、そうなのだけどね。
<佳子>
 先生、何か含みのある言い方ですね。


<中洲先生>
 皆の預金口座の残高が増えた理由が、給料が振り込まれたり、ボーナスが振り込まれたりした結果だったら、それは大変結構なことだね。だけど、日銀が、量的緩和措置と言って日銀当座預金残高を高めに維持しているのは、少し事情が違うんだよ。
<佳子>
 どういうことですか。
<中洲先生>
 日銀が、何の理由もなく、一方的に各銀行にお金をプレゼントするようなことはないよね。
<研一>
 そうですね。金融緩和措置と言っても、それは市中銀行が保有している手形や国債を買い取る行為だから、そうした手形や国債を提供しないと、日銀から当座預金勘定にお金を振り込んでもらえないということですか。
<中洲先生>
 そのとおり。

<佳子>
 そうすると、手形を20億円、国債を70億円、日銀当座預金勘定を10億円有している銀行が、日銀に手形を買い取ってもらい、その結果、手形が10億円に減り、国債が70億円で変わらず、日銀当座預金が20億円に増加したような状態になったのが、金融緩和措置の正体ということですか。
<中洲先生>
 そうだよ。
<研一>
 確かに手形で保有しているより、日銀当座預金の方が流動性があるのはそのとおりだと思いますが、何か劇的に変化しているわけではないのですね。


<中洲先生>
 いつでも潤沢に資金を投入すると日銀が宣言しているので、各銀行が資金繰りに困るということは少なくなったと言える。それに、無担保コールのような短期の金利はほぼゼロ金利で調達できる。ただ、だからと言ってそれは、日銀が何にもなしで貸してくれるわけではない、ましてや、プレゼントでは決してない。
<佳子>
 そうだったのか。詐欺というと言い過ぎかもしれないけど、日銀がジャブジャブ資金を投入しているというので、日銀が、担保のような見返りなしで各銀行に資金を投入というか、融資している印象があったんだけど、そうではないんだ。


<中洲先生>
 そうなんだよ。ただ、見返りの資産とか担保があれば、ゼロ金利でお金が借りることができるということだ。
<研一>
 だったら、日銀も、ゼロ金利政策から量的緩和政策に転換しましたなどと言うのは、ミスリーディングですよね。
<中洲先生>
 そうとも言えるかもしれないね。
 ゼロ金利政策から量的緩和政策に転換したのは、ゼロ金利だと、それ以上金利を下げることができず、日銀は追加的な努力をしているように見られないけど、量的緩和政策は、目標値をどんどん上げていけばいいので、日銀が追加的な努力を続けているように見えるということが理由だったからね。


<佳子>
 だけど、目標値を上げると言ったり、ジャブジャブ資金を放出すると言ったところで、日銀が無担保でお金を貸してあげているんじゃないんですよね。飽くまでも、銀行が持っている手形や国債が担保になったり、或いは保有している国債を買い上げたりしているということですよね。
<研一>
 そうすると、無制限に目標値を上げることが出来るように思われているけど、結局、市中銀行が保有している資産が限度になっているんですよね。
<中洲先生>
 二人とも、理解が進んだね。そうなんだよ。量的緩和政策は、あたかもゼロ金利政策よりもさらに緩和的な措置と見られているが、よくよく考えると、本当にそうなのか疑問なところもあるね。


<佳子>
 もう一つ疑問に思うのは、市場に資金をジャブジャブ投入していると言っているじゃないですか。だから、銀行を経て、実際事業会社にお金が流れる仕組みが作られていると思っていたのですが、そうでもないみたいですね。
<研一>
 その場合の「市場に」というのは、何の市場のことですか。
<佳子>
 そうそう、そこが分かんないのよ。
<中洲先生>
 市場というのは、コール市場のことだよ。


<研一>
 資金繰りに余裕のある銀行と資金繰りに余裕のない銀行が、それぞれの日銀当座預金口座間でお金のやりとりをする、あのコール市場ということですか。
<中洲先生>
 そうだよ。ただ注意すべきは、無担保コール翌日物は0.001%の水準だから、資金の出し手は日銀だけで、昔みたいに、市中の銀行間で、資金のやり取りが行なわれることは極めて少なくなっている。今は、片方の当事者は日銀というような状態だよ。
<佳子>
 そういうことが、量的緩和政策ということなのか。


次回に続く





経済ニュースゼミ(第10号、2004,12,10)
 みなさん、こんにちは。Seijiです。
 皆さんの周りは12月らしくなっていますか。街にはクリスマスツリーがあちこちに飾ってありますが、いつものことながら、クリスマスシーズンとか年末とかという気にはなかなかなりません。

 ところで、実質GDPの算定方式が正式に改訂されました。既にご紹介していたように、デフレーターの算定方式が改められたため、実質成長率が高めに出るという欠点が見直されたようです。


お詫びと訂正
 ここで、お詫びと訂正があります。11月20日発行分で、GDPの算定方式の見直しについて扱いました。その中で、デフレーターの基準年を1995年から2000年に改めたようだと記述しましたが、今回の見直しは、基準年を2000年に変更したということではなく、基準年を毎年変える「連鎖方式」にしたということです。



 ところで話は変わり、「天候デリバティブ」というのが新聞に出ていました。これを聞いて直ぐ分かる人は、金融通ですね。あんたは偉い!
 今年は、ご存知のとおり台風が多かったものだから、来年に備えて天候デリバティブというか、台風デリバティブの予約問い合わせがなされているそうです。

 天候デリバティブは、一言でいうと保険ですね。例えば、海の家、7月、8月に晴天で暑い日が続けば、海水浴の客が沢山訪れ儲かりますが、天気が悪かったり、低温が続くと、客が来なく赤字になってしまう。水商売だからと思い、運を天に任せますか?

 ところが、保険会社にお金を払い、天候デリバティブを買っておくと、予め決めた晴天の日の数に達しなかったとか、平均気温が例年より一定以上低かったとかというときに、保険金が下りると思って下さい。勿論、保険金の規模は、事前に払い込む保険料に比例しますが。そういうことで、天気が悪い日が続き、海の家の売り上げが上がらなくても、その分保険金が下りて、赤字にはならない。その代わり、晴天続きなら、保険金は下りず、保険料も掛けただけで戻ってこないわけですから、黒字の額は小さくなるという仕掛けです。

 実は、この天候デリバティブ、今から20年前位にアメリカからそうしたアイデアが紹介されたように記憶しています。デリバティブの走りの頃で、当時は、セキュリタイゼーションが盛んになり始めていました。



では、前回の続きを始めましょう。



★☆★☆★☆★
日銀当座預金
☆★☆★☆★☆



<佳子>
 ところで先生、日銀はゼロ金利政策をどうして止めてしまったのですか。というか、今でも金利はゼロですが、ゼロ金利政策という言い方をしなくなったんですか。
<中洲先生>
 いい質問だね。ゼロ金利政策が終わったのはいつですか、研一君。
<研一>
 イヤー、分かりません。
<中洲先生>
 実は、平成11年2月に景気が悪いんでゼロ金利政策を始めたでしょ。で、その翌年の平成12年8月には、ゼロ金利政策を止めてしまいます。
<研一>
 景気が回復し、ゼロ金利政策の必要がなくなったんですか。


<中洲先生>
 ゼロ金利政策開始前には、12千円とか13千円台にまで日経平均が下がっていたが、平成12年3月になると2万円台にまで回復する。設備投資も回復し、景気全体に明るいムードが出だしてきた。日銀は、企業収益が回復し、それがダムの水のように溜り、いずれはそれが川下へ流れ出す、要するに、消費に影響を与えたり、雇用環境が改善すると言っていた位だ。「ダム論」と言っていたんだよ。
<佳子>
 じゃあ、ゼロ金利政策はひとまず役割を果たしたんですね。関係者もゼロ金利の解除には異論はなかったんですね。


<中洲先生>
 ところが、そう単純でもないんだ。確かに後から振り返れば、平成12年のGDPは、実質3%と比較的高い伸びとなっている。ただ、当時ゼロ金利政策を止めることには、反対論も大きかったんだよ。与党の先生などが反対していた。
<佳子>
 では、どうして解除したんですか。
<中洲先生>
 日銀自身、そもそもゼロ金利政策は異例の措置であると考えていたので、出来る限り早期にこれを解除したかったという心理的理由もあったと想像されるよ。


<佳子>
 どういうことですか。
<研一>
 やっぱり、金利を小刻みに動かすようなことが金融政策らしいからじゃないのかな。
<中洲先生>
 金利がゼロというのは、実はマーケットメカニズムが働いていない状態で、速水さんが言っていたように、やっぱり異常な金融政策だった言うべきでしょうね。
 いずれにしても、景気の回復という背景があって、ゼロ金利政策は平成12年8月に解除された。


<佳子>
 その後は、何か面白い話があるんですか。
<中洲先生>
 面白いというと不謹慎だと怒られそうだが、景気がまた悪くなってしまったんだね。平成12年3月には2万円台を回復していた日経平均株価も再び下落し、平成12年12月には13千円台まで下落し、さらに年が明け、平成13年2月になると日経平均がバブル崩壊後の最安値を更新した。
<研一>
 そうなると、ゼロ金利政策を解除したのがけしからんという声が強まったんですか。
<中洲先生>
 そのとおり。


<佳子>
 日銀はゼロ金利政策解除が間違っていたと認めたんですか。
<中洲先生>
 いや、それは認めなかった。あれは正しかったと。
<佳子>
 だけど、景気が悪くなって株価がそこまで落ちてくると、何にもしないわけにはいかなかったんでしょ?
<中洲先生>
 そうなんだよ。そこまで景気が悪くなる。そして、日銀の責任を問う声も大きくなる。日銀自身、何にもしないというわけにはいかなくなる。ただ、ゼロ金利政策に戻るというと、やっぱり過去の判断の過ちを認めたような格好になってしまう。

<佳子>
 結局どうしたんですか。
<中洲先生>
 その頃日銀政策委員会の中には、量的緩和措置を採用すべきだという声が大きくなりつつあった。また、日銀の事務方もゼロ金利政策に代えて、日銀当座預金残高を目標値とする量的緩和措置をこの際採用することを準備したんだよ。


<研一>
 ゼロ金利政策でも、異常な金融政策だと日銀は嫌がっていたんでしょ。それが、よく量的緩和政策まで踏み込みましたね。
<中洲先生>
 それだけ経済が冷え込んでいたのと、日銀を追求する声が大きくなっていたことがあるね。それに、量的緩和措置を採用すると言えば、ゼロ金利政策を解除したことの責任を追及されなくて済む。さらに、マネタリーベースの構成要素である日銀当座預金残高を目標値とするので、マネタリストの意向に沿い、日銀批判の声が和らぐことが期待できるということだったのかな。
<研一>
なるほど。合点、合点。
<中洲先生>
 佳子君は、合点してくれたかな。


<佳子>
 ことの経緯はよく分かりました。でも、さっき研一君が言っていたように、日銀は、というか少なくとも速水総裁は、ゼロ金利政策も嫌だったけど、量的緩和措置だって嫌だったんでしょ? 納得してないものを始めたんですか?
<中洲先生>
 鋭いね。明確には分からないけど、今の佳子君の発言は当たっていると思うな。


<研一>
 どういうことですか。
<中洲先生>
 21世紀になって、つまり2001年、平成13年の3月に量的緩和措置を決定するわけだけど、その3ヶ月ほど後、速水総裁は記者会見でこんな発言をしている。

「植物に水をいくらかけても、その植物が大きくなっていかないということの裏には、やはり何か、土地が悪いとか、肥料が悪いとか、日が当たらないとか、いろんなことがあります。植物が育つようにしていきながら水をかけていかない限り、いくら水をかけてもジャブジャブになってしまうだけです」

 どうだい、二人ともどう思う。
<佳子>
 何か同感、という気もしますが。
<研一>
 そんな発言をすると、また敵を苛立たせたんじゃないですか。
<中洲先生>
 まさに、研一君が言うとおり。

以下、次回に続く





経済ニュースゼミ(第11号、2004,12,13)
 みなさん、こんにちは Seijiです。
 皆さんは、もう年賀状を書き始めていますか。私はまだです。やっぱり、もう少し詰まらないと、その気にならないと言うか。

 ところで、今朝NHKのラジオの英語講座を聞いていたんですが、次のように聞こえたセンテンスが出てきました。


「でぃすうえい あい きゃんっ ごう ろんぐ」

 で、頭の中で、勝手に次のようなセンテンスを想像してしまいました。

 This way I can’t go long.

 うーん、意味が分からない。遠くへ行けないのか、時間を長く掛けることができないのか。

 このセンテンスの前の文章は、おばあちゃんが孫のクリスマスプレゼントにギフトカードを買いました、という内容でした。その後に This way I can’t go long  が来たのです。

 どういうことだか懸命な皆さんはお分かりでしょうか。

 分かったという人は、英語が相当できるか、耳がいい人ですね。
 反対に私は、相当耳がよくないです。それがヒント。
 
 もう分かりましたか?
 リスニングが下手で、特にLとRは今でも区別が付きません。LとRを比較しながら発音してもらえば、どっちか想像つきますが、普通の文章で何気なく喋られるとLかRか分かりません。

 えっ、答えが分かりました?


 そうです。
 This way I can’t go wrong. です。


 「これなら失敗はしない」という意味だったのです。下手に気を利かせて孫が喜びそうなおもちゃを選ぶよりも、ギフトカードを買って上げ、孫に欲しいおもちゃを選ばせる方が間違いがない、そういう意味でした。 

 
 ちゃん ちゃん   >^_^<


 では、日銀当座預金の続きを始めましょう。このテーマもそろそろ終わりに近づいて
います。
☆★☆★☆★☆
日銀当座預金
☆★☆★☆★☆


<研一>
 当時の日銀と、日銀を批判する人たちに間には、感情的なしこりも大きくあったみたいですね。
<中洲先生>
 そうだね。この前の植物になぞらえた話以外でも、所謂反対派を感情的に刺激した発言があったよ。平成13年8月の頃だったけど、記者会見でインフレ目標政策について質問された速水さんは、「このような制度は、私どもは問題にもしないし、このようなバカな金融政策はありえないと思います」と切り捨てた。
<研一>
 それは、相手も怒るでしょうね。
<中洲先生>
 まさに怒ったね。だけど今から考えたら、そこまで思ったことを言っているんだから、気持ちはいいのかなとも思うけど。


<佳子>
 じゃあ、速水さんは、言うことは言うんだ。だけど、結局、量的緩和政策には賛成したんでしょ。
 それに、この前聞いた銀行保有株式の買取というような禁じ手まで採用したんでしょ。言っていることとやっていることは違うんですか。
<中洲先生>
 日銀の総裁と言えども、自分の一存でモノを決めるわけではない。金融政策については、日銀政策委員会の多数決で決める。そういうこともあるからね。


<佳子>
 先生、ところで質問があるんですが。
 量的緩和政策というのは、日銀当座預金残高を目標値とするということで、最初は5兆円から始まったんですよね。その後の経過はどうなったんですか。まだまだ続くんですか。
<中洲先生>
 実は量的緩和政策を始めた平成13年は、経済成長率はマイナスなんだよ。それに9月には何が起こったか覚えている?
<研一>
 アメリカの同時多発テロです。
<佳子>
 ああ、あの時、株価が大きく下がりました。


<中洲先生>
 そういうことで、当初5兆円の目標値が6兆円、次に「6兆円以上」となっていった。その後、平成13年12月には、10-15兆円まで引き上げられた。更に、平成14年10月に15-20兆円へ引き上げられた。しかし、日経平均株価はずーっと下がり続けるんだね。
<研一>
 確か、平成15年4月に76百円台まで下がり、どうなることかと思いました。あの頃が一番暗かったのかな。
<中洲先生>
 実は、GDPの実質成長率でみると、平成14年、西暦で言うと2002年の後半以降はマイナス成長を脱し、プラス成長なんだよ。2003年全体では、3.2%の成長だ。しかし、日経平均株価の方は、2003年4月にボトムをつけたぐらいだったから、世間の受け止め方はなかなか明るくならなかった。そういうなかで、日銀当座預金残高の目標値もずーっと引き上げられてきた。最後の引き上げが、今年の1月で30-35兆円ということになっている。


<佳子>
 景気が回復傾向になっても、調的緩和措置はむしろ強化されてきたんですね。
<研一>
 やっぱり、以前の日銀とは少しスタンスが違ってきていますよね。前だったら、早くオーソドックスな政策に戻したいと言っていたと思うな。
<中洲先生>
 そうだろうね。


<佳子>
 でも、いつかは量的緩和政策も必要なくなるんでしょ?
<中洲先生>
 日銀は、消費者物価指数の変動率が安定的にゼロ以上になるまで量的緩和を続けると公言している。
<佳子>
 どういうこと?
<中洲先生>
 物価が上がる状態になったら量的緩和措置を止めるということだよ。で、その場合の物価とは、消費者物価指数を指すと言っている。


<研一>
 企業物価指数はプラスに転じましたが、消費者物価指数はまだ、マイナス基調ですよね。
ゼロにはなっても、プラスにはなっていない。
<佳子>
 そうすると暫く続くのかな。
<中洲先生>
 そういうことだろね。
<佳子>
 量的緩和政策を解除するときは、どうするのかな。一遍に止められるんですか。それとも、徐々に日銀当座預金残高の目標値を下げるんですか。
<中洲先生>
 それはみんなで考えて下さい。



 以下、次回に続く



■□■□■□
おまけの話

 This way I can’t go wrong ですが、如何に人間は脳で見て、聞くかということを考えさせられました。養老先生がいつも言っていますよね。全ての出来事は脳の中の世界だと。
 要するに、錯覚とか思い込みが起きやすいと。
 で、何故 wrong がlong に聞こえたかというと、思い当たるところがあります。少し前、次のようなセンテンスが講座に出てきていました。

 We’ve come a long way.

 随分進歩したものね、という意味です。 気の利いた表現だなと記憶に残ったのが、よかったのか悪かったのか。

The good news is   We’ve come a long way の表現を覚えた。
The bad news is    ろんぐ と聞こえたら、全部 long と思ってしまうようになった。
結果、Wrong がふっとんでしまい、I can’t go wrong が理解できなかった。



経済ニュースゼミ(第12回、2004,12,15)
 こんにちは、Seijiです。
 12月なのに今日は全然冬らしくありません。でも、年賀状の受付が始まったらしく、小川直哉が郵便局でハッスルハッスルと気勢を上げていました。

 14日にアメリカの商務省が今年の1月から10月までの貿易赤字額を発表しましたが、5,004億ドルらしいです。これまでの年間最高額だった昨年を、10ヶ月で追い抜いたということです。ということで、日銀当座預金の話に入る前に、アメリカの貿易赤字から始めましょう。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
アメリカの貿易赤字
◆◆◆◆◆◆◆◆◆

<佳子>
 先生、アメリカの貿易赤字がまた記録更新したらしいですね。
<中洲先生>
 そうみたいだね。最近は、日本以外に、中国を始めとするアジア諸国からの輸出が伸びているからね。
<研一>
 アメリカは、心配はしていないのですか?
<中洲先生>
 アメリカの国民一人ひとりがどう考えているかは、わかんないけど、心配しているのはそのとおりじゃないの。その証拠にさっき、ABCのニュース番組で貿易赤字を取り上げていたよ。

(注)PBSの番組の間違いです。


<佳子>
 どんなこと言っていました?
<中洲先生>
 国際経済研究所のバーグステン所長がインタビューに答えていたよ。
<佳子>
 有名な人なんですか?
<研一>
 最近は、スティグリッツとかクルーグマンとかが有名なんじゃないのですか。

<中洲先生>
 テレビを見ていたら、聞いたことのある名前だったのでよく見たらバーグステンだった。
 ロンヤス時代に日米貿易摩擦問題が燃え盛ったとき、バーグステンは、アメリカのドルが高すぎ円が安すぎることが最大の原因だと主張していたよ。だから、日本は円がもっと高くなるようにいろいろ手段を尽くすべきだと言っていたんだよ。

<佳子>
 で、その偉い先生、今回はどんなことを言っていたんですか。
<中洲先生>
 やっぱり、貿易赤字が拡大している最大の要因として、ドルが過大評価されていることを挙げていた。第二には、アメリカの経済成長率が、他のヨーロッパ諸国や日本よりも高いことを挙げていた。
<研一>
 じゃ、ドル安にしないといけないということになるのですか。
<中洲先生>
 長期的にはそのとおり。だけど急激に流れを変えようとすると、金利が急騰して大変なことになると言っていたよ。その意味で最近のように比較的マイルドなドル安であるのならば問題はないという考えのようだね。


<佳子>
 ドル安にすること以外に、アメリカとしてすべきことはないのですか。
<中洲先生>
 年が明けると大統領教書が発表される。新しい政策が明らかになるのだけど、その中でしっかりした財政赤字削減策を樹立することができるかどうかが鍵だと考えているようだね。
<佳子>
 そうなんだ。


☆★☆★☆★☆★
日本経済の動向
☆★☆★☆★☆★


<佳子>
 最近の日本の経済の動向はどうなんですか。やっぱり、踊り場にきているんですか?
<中洲先生>
 難しい言葉を知っているね。ところで、その日本経済だけどなかなか診断がむずかしい。
 研一君はどう判断する?
<研一>
 先生から、日銀当座預金の話を聞いてから、ずーっと債券相場を見ているんですが、ここに来て金利が下がり気味なんで、やっぱり市場関係者は少し悲観的かなと感じています。でも、明るい材料もあるから何とも言えない面もあるのかなと。


<佳子>
 そういえば、日産なんかが、材料が確保できず、工場の操業を休んだとか、鉄鋼の需給関係が逼迫しているとか言っていましたね。
<中洲先生>
 ここ2−3日の株価は上昇。ただ、これと景気判断を単純に関連付けることは困難。
 設備投資は、今年度の設備投資が製造業で22%の伸びとなり、全産業でも8.3%へ上方修正されている。これは相当明るい材料だね。しかし、本日発表された短観では‥。
<佳子>
 短観って何ですか?
<研一>
 日本銀行が発表している景気判断のアンケート調査だよ。正式には日銀短観と言う。
<中洲先生>
 短観の大企業製造業の12月の景況判断が、4ポイント悪化して+22に落ちている。
<佳子>
 家に帰って新聞読もうっと。





では、日銀当座預金について、前回の続きです。


☆★☆★☆★☆
日銀当座預金
☆★☆★☆★☆


<中洲先生>
 佳子君、研一君、日銀当座預金のことは理解できたかな?
<佳子>
 日銀当座預金が、誰の預金かというのは理解できました。でも、日銀当座預金を目標値にしていることと量的緩和との関係がイマイチ。
<研一>
 それは、先生が前に話をしてくれたとおり、日銀当座預金残高が潤沢であれば、取り敢えず資金繰りに苦労することがないことになるからね。少なくとも、日銀当座預金残高が少ないよりも多い方が、いざというときに銀行は困らなくて済むはずだから。


<佳子>
 それは分かるわよ。そういうことじゃなくて、仮に今のように日銀当座預金の残高が35兆円ある状態でも、いろいろなケースがあるんじゃないかということ。
<中洲先生>
 もう少し具体的に言ってくれるかな。
<佳子>
 あのね、先月末に35兆円残高があったとしますね。それで、各銀行がその当座預金を引き出したり、積んだりして今月末も35兆円になったけど、日銀は新たな買いオペはしなかったような場合。それと、同じく先月末も今月末も共に35兆円の残高があるけど、今月は、各銀行が資金を新たな融資等に回して資金不足が生じ、日銀が5兆円分買いオペを実施したような場合。


<中洲先生>
 なるほどね。
<研一>
 確かに、そういう場合全然意味が違うね。
<佳子>
 だから、量的緩和というのであれば、やっぱり日銀の資金供給額を目標値にすべきではないかなと思うんですよ。
<中洲先生>
 それだと分かりやすいね。

<佳子>
 それに、繰り返しみたいになっちゃうけど、日銀当座預金というのは、市中の銀行等が保有する預金でしょ。それを他人の日銀が目標値にするといってもやっぱりピンとこないのよね。
 仮に準備預金制度がなくても、各銀行は日銀に当座預金勘定を持っていないと、政府との資金のやり取りができなかったり、銀行間の資金の決済ができないので、当座預金勘定が必要なのは分かったわよ。でも、それは私たちの場合でも同じで、必要以上に普通預金口座に残高があると、テラーさんから「いい運用先があります、外貨預金なんて如何でしょう」なんて言われるもんね。その銀行が、利息のつかない日銀当座預金に余分なお金を積んどくはずはないわ。


<研一>
確かに、かつて5兆円だった残高が今は30兆円とか35兆円の規模になっているということは、6-7倍の規模になったということだよね。
<佳子>
 一体、民間銀行側は、この量的緩和政策で恩恵を被ったんですか。これからもこの政策が続くことを強く望んでいるのかな?
<研一>
 少なくとも、0.001%という所謂ゼロ金利で資金が調達できるということは大変助かったんじゃないかな。
<中洲先生>
 そうだね、特に年度末などには手厚く資金供給を行なってきたので、銀行さんは大助かりだったろうね。
<研一>
 金融不安を起こさないような環境を作ったということですか。
<中洲先生>
 そうだね。


<佳子>
 だけど、札割れが生じているんですよね。日銀の買いオペに対し、応募が満たないことが起きていると思いますが。それは、市中の銀行は、資金繰りにはもう困っていないですという証明なんでしょ?
<中洲先生>
 全くそのとおりだと思う。
<佳子>
 しかし、日銀当座預金残高の目標値を下げるどころか、ずーっと上げてきたのですよね。
<研一>
 札割れが起こるほど資金需給が緩和してても、目標値を下げることができない理由があったんですか。


<佳子>
 デフレを食い止めるということですか。
<中洲先生>
 結局そうなる。デフレは貨幣的現象だから、デフレを是正するのは、貨幣の量を増やすことによるべきだという考えがあるからね。
<佳子>
 それで、不況を食い止めるとか、景気を回復させる効果はあったんですか。
<中洲先生>
 景気が回復していると言われているが、その原因が何かははっきりしないね。


<研一>
 マネタリストの人たちが実験したというと、その方の立場の人からはお叱りを受けそうですが、何か、マネタリーベースを増やすと景気回復につながることを証明するために実験をさせられたような感じですね。
<中洲先生>
 研一君はそう感じるのかね。
<佳子>
 今後、仮にデフレが続くようなことがあれば、目標値を更に上げるんでしょうか。
<中洲先生>
 そういうことが起こらないように願いたいけど。


<研一>
 だけど、日銀が言うように、消費者物価が今のように僅かながらマイナスかゼロというような状態がずーっと続いたらどうなるんでしょうね。
<佳子>
 物価は上がらないけど、GDPはどんどん成長するというようなケースではどうなんだろう?
<中洲先生>
 頭の体操としては非常に面白いよね。だって、景気が本格的に回復するとなると金利も少しは上がってくるだろうから、日銀当座預金の目標値を設けても、とても達成は不可能になるだろうね。だって、金利が上がれば、民間銀行は日銀当座預金を最低限度しか持たなくなるだろうから。
<佳子>
 そうなったら、日銀当座預金の本質が明確に理解されるのかな。



次回に続く





経済ニュースゼミ(第13号、2004,12,17)
 みなさん、こんにちは、Seijiです。
 クリスマスまであと1週間ほどとなりました。それに、もう忘年会のシーズンですね。皆さんも今日辺りから、忘年会が予定されていますか。でも、飲みすぎには注意してください。
 忘年会と言えば、カラオケにも行きますか。季節柄、クリスマスソングもいいですね。

 クリスマスソングと言えば、いろいろいい歌が多いですが、英語で歌うとなると結構大変ですよね。でも、逆に言えば、英語で歌えると格好いい。

 赤鼻のトナカイの歌、知っていますか。ルドルフという名前のトナカイですが。鼻が赤いんですね。初めは、他のトナカイから仲間はずれにされていたんですが、クリスマスイブにサンタさんが、ルドルフの赤く光る鼻をみて、私のソリの案内をしなさいと言って、それから皆の仲間になったんですって。それじゃ、蛍みたいなトナカイですね。

 いずれにしても、他のトナカイも最初は意地悪だったんですね。トナカイだけに「と仲いい」と思ったんですが。

 ところで、この赤鼻のトナカイの歌の最後は、「お前の名前は、歴史に残る」という台詞です。

 You’ll go down in history.

 で、この歌い方ですが、英語らしく聞こえるようにするために、

 ゆーごー だうん いん ひすとりー    ではなく、
 ゆーごー だうん いん ひすてりー     

と歌う方がいいですよ。試して!






<佳子>
 ハタヨークって知ってますか?
<中洲先生>
 あぽーん。
<研一>
 ギター侍なら聞いたことあるでしょ?何とか斬りってやつ。
<中洲先生>
 あぽーん。
<研一>
 で、そのギター侍がどうかしたの?
<佳子>
 凄い人気だなって思って。だってね、マーケット情報でも話題になっているみたいよ。
<研一>
 まさか。
<佳子>
 債券先物で、3月斬りってやっていたよ。
<中洲先生>
 それは、3月限のこと。佳子残念!


 では、日銀当座預金を始めます。今回でこのテーマは終わりです。


★★★★★★
日銀当座預金
★★★★★★


<中洲先生>
 今日は、日銀当座預金のまとめとして、関連するトピックスを取り上げるよ。
<研一>
 何ですか。
<中洲先生>
 「誤解しやすい」ということがキーワードで、3つある。最初はインフレターゲット。
インフレターゲットとは何でしょう。
<研一>
 改まって聞かれると、考えてしまうけど、あれでしょ。日本がデフレ、つまり物価が下落し景気が悪くなっているんで、日銀が物価の目標値を設定すべきだというやつでしょ。
<中洲先生>
 そうすると、物価上昇の目標値のことだね。
<研一>
 そういうことじゃないですか。違いますか?


<中洲先生>
 インフレターゲットを採用している国はありますか?
<佳子>
 イギリスとか、カナダ、ニュージーランド、それに北欧とかであるって、誰かが言ってませんでしたっけ?
<中洲先生>
 それらの国は、物価上昇の目標値を採用しているということですか。
<佳子>
 そう聞かれると困っちゃう。
<中洲先生>
 ねえ、困るでしょ。確かにインフレ目標値を採用している国は幾つかあるんですよね。だけど、それらはインフレが恐いので、物価上昇率はその程度に抑えますという宣言をしているんですよね。だから、日本とは全然状況が違う。日本は、物価を引き上げるという意味で、インフレターゲットが提言されている。


<佳子>
 そういう意味では、前例はないんですね。
<研一>
 そうだったんですか。僕は勘違いしていた。
<中洲先生>
 分かってくれました。ねえ、誤解してたでしょ。
<佳子>
 先生、次は何。今度は頑張るよ。


<中洲先生>
 第2番目は、リザーブターゲット。
<佳子>
 先生、降参、分かんない。
<中洲先生>
 諦めが早いね。
<研一>
 リザーブっていうから、準備預金に関係することですか。
<中洲先生>
 卓球
<佳子>
 何ですか、それ?
<中洲先生>
 ピンポン。
<研一>
 ということは、準備預金に関係しているんですね。


<中洲先生>
 今までやってきた日銀当座預金の目標値のことだね。現在の量的緩和政策は時として、リザーブターゲッティングと呼ばれる。
<佳子>
 それは、日銀当座預金を目標値にしているからでしょ。
<中洲先生>
 それはそうなんだが、アメリカでもかつてリザーブターゲティングが採用されたことがある。
<研一>
 えっ、そうなんですか。いつの頃ですか?
<中洲先生>
 もうかなり前になる。ボルカーさんの時代だ。


<研一>
 そうすると、今日本が採用している金融緩和措置は、アメリカにお手本があったのですか?
<佳子>
 ボルカーさんが連銀総裁の頃、今の日本と同じようにデフレで苦しんでいたのですか?
<中洲先生>
 いや、そうじゃなくインフレが激しくなって金融の引き締めをやったんだ。
<研一>
 それだと今の日本とは正反対ですよね。なのに何でリザーブターゲッティングですか?


<中洲先生>
 これは、佳子君に答えてもらった方がいいかな。
 佳子君、分かるんじゃないかな。
<佳子>
 分かった。研一君、これ常識。金融の引き締めでしょ。預金の準備率を引き上げたのよ。市中の銀行が中央銀行に預けなくてはいけない準備預金を引き上げたのよ。
 先生、卓球でしょ。
<中洲先生>
 ピンポン。
<研一>
 それは理解できるんですけど。


<佳子>
 だけど何か変ですね。アメリカも当座預金残高が増えるのは日本と同じだけど、効果は逆ですね。アメリカは引き締め、日本は緩和。
<中洲先生>
 ねえ、やっぱりおかしいでしょ。同じくリザーブターゲッティングというものでも、アメリカは引き締めのため、日本は緩和のためだ。だけど、通常リザーブターゲッティングというと、アメリカのケースを指すから、注意して欲しいということだよ。
<研一>
 アメリカのケースも当座預金は増えるので、その分はマネタリーベースは増えるんですよね。でも引き締めになってしまうんですね。
<佳子>
 それは、あれでしょ。マネタリーベースが増えたとしても、市中銀行が融資に回せるお金が減少して、融資が減ると。そして融資をうけた事業者がそのお金を使い誰かの所得になって、その人が預金をすると。そして、その預金には高い準備率がかかると。そうやって、世の中に出回るマネーの総額は縮小するというやつよ。以前研一君が説明してくれたケースの逆。
<研一>
 佳子ちゃん、凄い!

<佳子>
 先生、3番目は何?
 今度こそ頑張る。
<中洲先生>
 3番目はアコード。
<佳子>
 やっぱり駄目。アコーディオンなら分かるけど。
<研一>
 竹中大臣が、速水日銀総裁に呼びかけたやつですか。何か協定でも結ぼうとか、そういう意味のものだった気がしますが。
<中洲先生>
 研一君、凄いね。
<佳子>
 それなら少し思い出したよ。日銀が独立性を強めてというか、さっきのインフレターゲットも含めてあまり政府の意向を汲んでくれないものだから、竹中さんが呼びかけたんだよね。


<中洲先生>
 で、ラブコールを送られた速水さんの反応は?
<佳子>
 知らない。
<研一>
 誘いに乗らなかったように思いますが。
<中洲先生>
 そうだったね。アコードというのはもともとアメリカの政府、財務省と中央銀行の間で、財務省が中央銀行の行動に口を挟まないことを合意したものだったからね。


<佳子>
 どういうことですか。
<中洲先生>
 アメリカでは、戦時中から中央銀行が政府から国債の買い支えをさせられてきたが、1951年に、そうしたことを止め、金融政策の独立性を確保する取り決めを結んだんだよ。
<研一>
 そうすると、日本とは逆の方向を向いたアコードなのですね。
<中洲先生>
 ねえ、やっぱり変でしょ。
<佳子>
 へー、そうなんだ。



次回から、新しいテーマを取り上げます。ご期待下さい。


★★★★★★★★★★
お詫びとおまけの話
★★★★★★★★★★

 前回バーグステンの意見を紹介しましたが、「ABCのニュース」でといいましたが、「PBSの番組」でした。ごめんなさい。失礼しました。
日本語の要約が見たい人は次へどうぞ。原文にもアクセスできますよ。

http://www.columnist-seiji.com/sub6-14.html

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